シャープと半導体エネルギー研究所は2002年10月22日,CGシリコン(Continuous Grain Silicon,連続粒界結晶シリコン)を使って液晶のガラス基板にCPUを形成することに成功したと発表した。ガラス基板上にCPUやメモリを搭載できれば,液晶がそのまま薄型のコンピュータになる。つまり,将来的にはシート形状のコンピュータを作れるという。

 CGシリコンは,一つひとつの粒子が大きく形が均一なため,電子の移動速度が速いのが特徴。具体的には,現在液晶に多く採用されているアモルファスシリコンの約600倍,低温ポリシリコンの約3倍で,ほぼ一般的な単結晶シリコンと同じ程度である。つまりCPUのような高速動作が必要な論理回路を液晶のガラス基板上に形成することが可能になった。

 今回の発表では液晶パネルのガラス基板にLSIを実装する第一歩としてCPUを搭載した。厚さ0.7mmのガラス基板上に3MHzの8ビットCPUであるZ80を実装した。今後,製品としては同社が「ディスプレイカード」と呼ぶ,シート状の液晶パネルにCPUなどを搭載したものに発展させることを考えている。製品化のメドは2005年。ただ,「シート状のコンピュータのニーズがあるかどうかはわからない。高性能のCPUを積むことに意味があるとは思わないので,どのような形で製品化するかは定かではない」(シャープ モバイル液晶事業本部の片山幹雄本部長)という。

 シャープは,既に10月から奈良県の天理工場でCGシリコン液晶の量産を開始している。まずは,年内に出荷予定の次期ザウルスの液晶に採用する。CGシリコンは粒子が均一なので高密度化できる。液晶ディスプレイとしては高精彩化できるという特徴がある。

(堀内 かほり=日経バイト)