ADSLサービス「Yahoo! BB」のインフラを構築するビー・ビー・テクノロジー(BBテクノロジー)は2002年8月27日,営業妨害を受けたとして同業のイー・アクセスの最高技術責任者である小畑至弘氏を相手取り,損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所で起こした。

 小畑氏は,イー・アクセスの最高技術責任者であると同時に,国内の電気通信分野の標準化団体である情報通信技術委員会(TTC)で,DSL技術のスペクトル管理関連の検討チーム(第四部門委員会 第六専門委員会 サブワーキンググループ5)のリーダーを務めている。

 BBテクノロジーは小畑氏がこのTTCにおけるスペクトル管理チームのリーダーという立場を利用して,Yahoo! BBのサービスを誹謗中傷していると主張。その結果としてユーザを獲得する機会を失い,営業妨害を受けたという。

 BBテクノロジーが問題としているのは,2001年7月と2002年8月にそれぞれ同社が提供開始したADSLサービスで利用するモデムの技術方式に対する小畑氏の発言や行動である。

 例えば,2001年9月4日にTTCが行ったスペクトラム管理の導入に関する記者説明会。スペクトラム管理とは異なるDSL技術が同じ電話線の束の中で共存できるようにするためのルールであり,信号の周波数帯域と出力などを定めている。この席上小畑氏は,Yahoo! BBの採用したG.992.1 Annex Aが日本の通信回線ではISDNの影響で著しく減衰するため,高速通信が出来なくなるのではないかと発言し,TTC文書にある特定条件下におけるシミュレーション結果をその根拠として示したという。

 イー・アクセスやNTT地域会社などのADSL事業者は,G.992.1 Annex CやG.992.2 Annex Cなど,Yahoo! BBとは異なる技術規格を採用しサービスを提供している。

 また,Yahoo! BBが2002年8月12日に開始した新サービスについても,採用した独自方式「Annex A.ex」が他方式に悪影響を与え得るという立場を取った。記者を集めて,Annex A.exが他のDSL方式に大きな影響を与えると発言したという。

(市嶋 洋平=日経バイト)