オーストラリアで開催していた開発者向け会議「Borland Conference 2002」を終え,米Borland Software社Developer RelationsのJohn F. Kasterシニア・マネジャが来日して,2002年8月8日に記者会見をした。「2003年前半には.NET Frameworkで動作するDelphiの新版を出す」などと語った。

 会見の大半の話題は米国で8月6日に発表した「Delphi7 Studio」。なかでもプレビュー版という位置づけの.NET Framework対応についてに終始した。基本的にプレビュー版では,CIL(Common Intermediate Language:これまでMSILと呼ばれていたもの)コード生成機能とランタイム・ライブラリ,および文書などの情報しか盛り込まれていない。言語仕様面では,必須ともいえる名前空間(namespace)へ対応した。これらにより,.NET Framework対応のアプリケーション開発が一応できるようになった。例えば「uses System.Windows.Forms.form」という形で名前空間を指定できる。またDelphi7 StudioのメニューからコンパイラやMicrosoft社製のデバッガを呼び出せる。ASP .NET対応のIIS(Internet Information Services)に組み込めば,サーバ側スクリプトとしてDelphiを利用できる。ただしWinFormsを利用したビジュアルなユーザ・インタフェースの開発などはできない。

 これが正式対応版「Delphi for .NET」になると,(1)VCL for .NETの搭載による既存資産とのコード互換性の確保,(2)プロパティ型や入れ子型(nested type)などを含む言語仕様の拡張,(3)DataSnap DirectによるADO .NETとは別のデータベース・アクセス技術の提供,などが盛り込まれる。Delphi for .NETのプレビュー版は2002年中に出てくる計画だ。

 さらに次のステップが,「Galileo(開発コード名)」だ。GalileoはDelphi for .NETの「次」に来るもので,2003年前半の発売を計画している。ピュアな.NET Framework環境で動作するもの。「JBuilderがピュアJava環境で動くのと同じ」(Kaster氏)。生成のターゲットは.NET Framework環境向けだけでなく,WindowsやLinuxネイティブ環境にも対応する。分散オブジェクト環境としては,CORBA,COM,SOAPを利用できるものにするという。

 なお国内における対応については,8月22日近辺に発表するという。

(北郷 達郎=日経バイト)

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