ヤフーとビー・ビー・テクノロジーは2002年6月27日,ADSL接続サービス「Yahoo! BB」の下り伝送速度を高速化する新サービス「Yahoo! BB 12M」を発表した。7月1日より試験サービスを開始し,8月1日に商用サービスへ移行する。試験モニタは3000名募集する予定。現在提供中のサービスは「Yahoo! BB 8M」として提供を続ける。

 Yahoo! BB 12Mのサービスの実現に当たり,ビー・ビー・テクノロジーは独自のADSL仕様(Annex A.ex)を作成し,それをADSLチップ・メーカに開発してもらったという。A.exは,国際標準のADSL仕様(G.992.1 Annex AおよびAnnex C)に,独自のエコー・キャンセラ技術を組み合わせたもの。エコー・キャンセラとは,同じ帯域を上り方向と下り方向の両方の通信に割り当て,受信時に自分が送信した信号成分を取り除くことで正しい受信信号を取り出す技術である。

 A.exでは,これまで上り方向の通信に割り振られていた帯域を,下り方向の通信にも使うようにした。具体的には35k~135kHzの帯域を両方向の通信で利用する。これにより下り方向の帯域が100kHzほど広がるので,下り方向の信号を運ぶキャリア周波数の本数が増える。さらに,キャリア周波数当たりの伝送データ量も多くした。これが高速化できた理由である。

 A.exを用いると,信号減衰がまったくない状態での最大下り速度(理論値)は12Mビット/秒となる。ただし,ビー・ビー・テクノロジーが実際にテストしたところ,従来モデムを使った場合に対し,平均で1Mビット/秒ほど下り方向の伝送速度が高速化した程度の効果だったという。また上り方向の速度への影響は,ほとんどなかった。

 A.exは伝送距離の延長にも効果がある。テストでは1k~2km程度伸びたという。距離が伸びる理由は,通常下り方向が使っている周波数帯域138k~1.1MHzに比べ,A.exで使う35k~135kHzは信号の減衰や外部ノイズの影響を受けにくいためと思われる。

 Yahoo! BB 12Mの試験サービスは同8Mサービスに対して,月額400円を上乗せした3557円で提供する(NTT回線使用料金を含む)。今回新しく提供するADSLモデムにはIP電話サービス「BBフォン」の機能も搭載する(ユーザがBBフォンを申し込まない限り,機能は有効にならない)。

 なお,アッカ・ネットワークスはADSLサービスの下り最高伝送速度を最高10Mビット/秒へ,イー・アクセスは12Mビット/秒にすることをそれぞれ発表している。NTT東日本は「2002年秋ごろに伝送速度を速めたサービスを提供したいと思っているが,詳細は未定」(広報部)という。

(市嶋 洋平=日経バイト)