有線ブロードネットワークスは,有線放送の同軸ケーブルを使った下り30Mビット/秒のインターネット接続サービスを年内に開始する。上りは1.5~10Mビット/秒。月額料金は「ADSLに対抗できる価格にする。高くても3000円台に収める」(同社HFC事業部部長の藤本篤志取締役)。2002年6月1日から接続実験を開始する。

 同社は2001年2月から,光ファイバ網を使ったインターネット・サービスを展開している。しかし現時点で,このサービスは遅々として普及していない。理由は,各戸まで光ファイバを引き込む必要があるため。これがエリアの拡大を難しくしている。2002年4月末時点での同社の光ファイバ・サービスの取り付け総数は8572。同時点で日本全体のADSL契約者数は270万程度であり,大きく出遅れている。

 そこで有線ブロードは,同軸ケーブルを使ったインターネット接続サービスの提供を決断した。同社は,有線放送のために,全国の電柱に同軸ケーブルを敷設している。そのカバー率は全市町村の97%に上る。つまり,同軸ケーブルは既に引き込まれているか,すぐに引ける状態にある。後述するように光ファイバをある程度敷設する必要はあるものの,各戸まで光ファイバを引き込むより展開が容易である。

 この接続サービスではケーブル・モデムを利用する。ネットワークの構成も,CATV事業者のインターネット・サービスとほぼ同じになる。基幹部分を光ネットワークで結び,各家庭までの最後の部分をケーブル・モデムで結ぶ。ケーブル・モデム技術の標準が確立したことにより,このサービス導入を決断したという。「2001年の秋頃に,DOCSISが世界標準と言える状況になった」(藤本氏)。DOCSISとは,北米や南米のCATV事業者が策定したケーブル・モデム技術の仕様。これを採用することで,不安なくケーブル・モデムを利用できるようになる。技術継承性や低価格性が期待できるためだ。

 現在の有線放送サービスはすべて同軸ケーブルで提供されているが,サービス開始にあたって途中までを光ファイバに変更する。その先から利用者の宅内までを同軸ケーブルで接続する。

 接続実験は,2002年6月1日から8月31日まで実施する。最初の実験場所は,東京都世田谷区と,調布市の一部。開始時は個人顧客を対象とした実験となる。徐々に駅前繁華街の飲食店にも対象を広げる。

(八木 玲子=日経バイト)