松下電器産業は2002年3月25日,障害物やゴミの量を検知し,走行と集塵を自律的に制御する家庭用掃除ロボットを開発したと発表した。2002年5月から一般家庭での実証実験を開始し,2~3年後の商品化を目指す。


 50個のセンサを用いて自律的に障害物を回避したり,方向を制御できる。障害物検知用として,約50cm先を監視する超音波測距センサ,約20cm先の障害物を検知する赤外線測距センサ,および感圧センサを搭載。これらによって障害物や壁面を検知し,10~15cm手前で停止,90度もしくは180度回転する。ジャイロセンサにより方向を検知し,正確に直進走行するよう姿勢を制御する。カーペットの毛足の向きによる走行方向のズレを,車輪に設けた角度検出センサで検出し,走行方向を調整できる。


 集塵制御としては,ノズルとダストボックスをつなぐパイプに赤外線センサを設けた。通過するゴミの量が増えると走行速度を下げ(通常30cm/秒に対して15cm/秒),吸引力を1.5倍に上げる。ゴミが多い箇所での集塵能力を高める。


 また,6cm以上の段差を検出し転落を防止する段差センサ,ストーブなどの熱源を検知し回避する熱センサ,子供が押さえつけたりするなどの外力を検出し自動停止させるための重量センサやモータ過負荷センサなども装備している。これらのセンサを用いた制御システムにより危険回避能力を高め,ゴミの取り残しを減らすことができたという。


 ただし,実用的な掃除はまだできない。基本的に部屋の縦方向に往復動作をしながら少しずつ横に進む動きと,横方向の往復動作をしながら少しずつ縦方向に進むという2種類の動作をするだけである。したがって部屋の形状や家具の配置によっては,掃除できない箇所が発生する。また障害物の手前15cmで止まるため,壁際や部屋の隅は掃除できないことになる。


 本体に内蔵したニッケル水素充電池で動作する。約2時間の充電で約55分の連続使用が可能で,この間に80平方メートルを清掃できる。本体寸法・重量は,202(W)×265(H)×367(D)mm,9.8kg。松下電器産業では一般家庭を対象に4世帯のモニタを公募し,2002年5月から一般家庭での実証実験を開始する。同社では,2~3年後に商品化する予定という。

(大森 敏行=日経バイト)