『日経マーケット・アクセス』(日経MA,http://ma.nikkeibp.co.jp/)が調査したところ,10インチ型を超える TFT液晶ディスプレイ・モジュールを使った液晶テレビ*1の2001年の世界生産台数は81万台と前年に比べ約4倍になる。2002年も好調に推移し約2倍の163万台と予測する。ただ,需要は日本市場にほぼ限られている。2003年以降も高い成長率を維持できるかどうかは,CRTにはない液晶ディスプレイならではの利点を生かした商品が出てくるかどうかにかかっている。

2001年は液晶テレビの普及元年

 液晶テレビ市場を育てることは,TFT液晶ディスプレイ・モジュールを製造する部門と,家電部門の両方を持つ日本の電機メーカーにとっては悲願である。特に,ノート型パソコン向けや液晶モニター向けで,韓国や台湾メーカーの低価格攻勢に苦戦するTFT液晶ディスプレイ・モジュール部門にとっては,技術力はもちろん,最終製品のブランド力でも差異化できる分野でもあるため大きな市場に育てたいという思いは強い。
 2001年は液晶テレビが普及するスタートの年になった。先陣を切ったシャープが年初に13インチ型,15インチ型,20インチ型とラインナップをそろえ,しかも最も安い13インチ型で希望小売価格が8万8000円と10万円を大きく割る設定にした。競合他社も10万円を切った13インチ型のインパクトは大きかったとし,液晶テレビの認知度が高まってきたムードを歓迎する。
 液晶テレビの生産台数は,2003年以降も高い伸びを示すことは間違いないが,2002年までの倍増以上の高い成長率を続けるのは難しいだろう。その理由は,2005年ころでも液晶テレビの市場は日本が中心であること, 20インチ型以上の大型テレビ市場を液晶テレビで置き換えていくことは難しいこと,パソコン向けの液晶モニターにテレビ・チューナーが搭載されるようになってきて市場を食い合う恐れがあることなどが挙げられる。そのため,2005年の生産台数は425万台と予測する。
 液晶の良さを生かすなら13インチ型以下の中型クラスの方が有望だろう。実際テレビ・メーカーでも,家の中でディスプレイを簡単に移動できる可搬型の市場に期待する見方は多い。

(中村 健)

*1ここでは,液晶テレビとして,10インチ型を超える大型TFT液晶ディスプレイ・モジュールを搭載し,テレビを見ることを主眼にした機器を対象にした。パソコン向けのテレビ・チューナー付き液晶モニターは含めていない。
*日経マーケット・アクセスでは,大型TFT液晶ディスプレイ市場について,詳細な調査報告書を発行している(http://ma.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/ma_frm/LCD2001/index.html?indexを参照)。

図1