英知法律事務所の代表弁護士である岡村久道氏は2月4日,千葉市・幕張メッセで開催中の「NET&COM2004」において「オープンソースの知的財産権問題を理解する」について講演した。

 フリーソフトに用いられているライセンス「GPL」(GNU General Public License)の概念や,13あるGPLの条項をあいまいな点には同氏の解釈を付け加えながら解説した。さらに,GPLと日米の著作権法を照らし合わせながら,ソフトウエアの改変,使用,頒布についてどのような場合に著作権侵害になる可能性があるのかを語った。

 特に,GPLのフリーソフト(以下,GPLソフト)を改変した際には「改変したソース・コードを必ず公開しなければならない」とのたびたび誤解されている点を指摘した。「個人や企業などの内部だけで利用するだけなら,改変したソース・コードを公開する義務はない。委託されてフリーソフトを改変したベンダーは,委託元との機密保持契約を課せ,さらに委託元の許可なしに公開はできない」と述べた。

 講演後に実施しされたQ&Aでも,フリーソフトと,ソース・コードを公開しない商用ソフトを組み合わせることについて多数の質問が寄せられた。ここでも具体的な訴訟や裁判の事例がないことから,同氏は次のような解釈を話した。「GPLソフトと静的にリンクされているソフトウエアおよび,POSIXなどで提供される標準インタフェース以外で動的にリンクされるソフトウエアは,GPLのライセンスに従う必要があるだろう」。ただし何を標準インタフェースと呼ぶかはあいまいなため同氏は「リスクを感じるものはリンクされるGPLソフトウエアの開発元に確認している」とした。同こんして販売する際には,GPLソフトウエアと商用ソフトウエアそれぞれにライセンス条件あるいは使用許諾書を別々に添付し,ディレクトリや別々のCD-ROMなどに分けておくべきだと語った。

 米SCO GroupがLinuxに関して知的所有権侵害でIBMなどを訴えている問題にも触れ,次の3つの観点からSCO Groupの勝ち目はないだろうとの意見を示した。(1)BSD系のコードも参照されて作られているLinuxが,BSDからの流れをくむ同社UNIXと似ていることは当たり前ではないか,(2)同社は以前にGPLに従ったLinuxディストリビューションを開発・公開していたので,自分たちのコードが含まれていたら当然分かっていたことだろう,(3)たとえ侵害個所があったとしてもコードを置き換えることでLinuxの配布を差し止めることはできないだろう、からだ。

(麻生 二郎=日経Linux)