写真:SOAの標準仕様を狙うJBI(Java Business)
の仕様書を持つJohn Loiacono上級副社長。

 Sun Microsystemsが今回行った多数の発表中,エンタープライズJavaの動向として要注目なのは,次世代J2EEとオープンソース化をめぐる動きである。

 まず,次世代J2EEの内容がほぼ固まった。EJB3.0や,JSF(JavaServer Faces)という新APIも加わる。正式仕様と実装が登場するのは,2006年の第1四半期の予定。また次世代J2EEは従来「J2EE5.0」と呼んでいたが,呼称変更して「Java EE5」という名前になる。

 大きな話題はJSR 208 JBI(Java Business Integration)である。JBIはSOA(サービス指向アーキテクチャ)時代の標準仕様を狙ったもので,メッセージングに基づく汎用的かつ包括的なSOA実現のメカニズムを規定している。JavaOne開催直前に正式仕様が公開された。すでにOracle,JBoss,TIBCO,Sonic Software,IONA,富士通など多数のベンダーが賛同を表明している。ただし,J2EEベンダー大手であるBEA SystemsとIBMの2社はJBIの標準策定作業の途中で抜けている。

 JBIに関連して要注目なのは,JBI仕様に基づくESB(エンタープライズ・サービス・バス)製品を,Sunがオープンソースとして公開したことである。JBIの早期の普及を狙う戦略である。

  今回Sunがオープンソースにしたのは,アプリケーション・サーバー製品Java System Application Server Platform Edition 9.0と,ESB(Enterprise Service Bus)製品Java System Enterprise Server Bus (Java ESB)の実装である。オープンソース・ライセンスとして,先にオープンソース化したSolarisでも使われているCDDL(Common Development and Distribution License)を使う。今回の発表で,SunのエンタープライズJava製品は完全にオープンソースとなったといえる。

 もうひとつ,次世代J2EEで要注目の点として,EJB3.0仕様の一部である「Persistence API」を,サブセットとして単独でも利用可能とした。EJB3.0全体をサポートすると大規模なソフトウエアとなるが,Persistence API単体であればより手軽に実現できる。O/Rマッパーの標準仕様の地位を狙う。

 エンタープライズJavaは,J2EE(次世代ではJava EE)の部分はインフラとして普及し,結果として「コモディティ化」が進んでおり,オープンソース化への要望は強かった。それに加えて,SOA時代のインフラとなるJBIについても,登場と同時にオープンソース実装を登場させた。企業システム開発の現場でも,インフラ部分はオープンソース・ソフトウエアである場合が当たり前となってくるかもしれない。

(星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト)