米IBMは,新たなリッチ・クライアント技術「IBM Workplace Client Technology」を発表した。オープンソースのEclipseフレームワークの上に構築してあり,この技術に対応するLotus/IBMのデスクトップ・ソフトウエア製品を,多種多様なクライアント環境から,場所を選ばず利用可能となる。2004年1月に米国で開催したイベントLotusphere 2004で披露したものである。

 日本国内では,5月18日から開催のIBM Software World 2004でこの新技術を発表する。「デスクトップ環境の新技術として要注目だ。Linuxクライアントをサポートする点もぜひ見て欲しい」(新たに同社エバンジェリストに選任された神戸利文氏)。

 リッチ・クライアント技術といえば,Webのユーザー・インタフェースを改善する製品が多い。今回発表のWorkplace Client Technologyの技術的な内容は「クライアント・ソフトを動的にダウンロードする枠組み」(Lotusphere 2004の講演資料より)で,それをオープンソースの開発ツールとして知られるEclipseのフレームワーク上に構築した(EclipseCon2004資料より)。

 新技術の狙いはLotus Workplace製品やIBM製品のリッチ・クライアント版の基盤となること。Lotusphereでのデモ画面では,Eclipseを使っている開発者にはお馴染みの画面スタイルの中で,電子メール,メッセージング,スケジュールといったアプリケーションが動く様子を見せている。

 サーバー側から管理できる点も特色である。サーバーからEclipseプラグインを動的にダウンロードし,再起動なしに利用でき,自動アップデートも可能とした。Eclipseを使うメリットとして,同社では複数プラットフォームに対応可能であること,ユーザー・インタフェース構築基盤が含まれることなどを挙げる。コンポーネントはJavaベースだが,EclipseのSWT(Standard Widget Toolkit)を使えばネイティブ環境を呼び出すコンポーネント(ActiveXなど)も利用可能になるという。

 クライアント側の稼働環境は,Windows,UNIX,Linux,それにSymbian OSなど。2004年後半にはMacOSにも対応予定。また,この新技術に対応したソフトウエア製品「IBM Lotus Workplace Messaging」および「IBM Lotus Workplace Documents」と,モバイル/組み込み機器向けクライアント技術「Workplcae Client Technology, Micro Edition(WCTME)バージョン5.7」も発表した。

 Lotusは,かつてJavaベースのオフィス・スイートeSuiteをネットワーク・コンピュータ上で利用するとの構想を打ち出した事があるが,時期尚早だったのか計画は中止となった。今回の新技術はJavaベースのクライアント技術としてより現実的な構想といえる。将来版のNotes/Dominoのクライアント・ソフトがEclipseプラットフォームの上で動くJavaベースのプラグインになる可能性もある。やがて「Eclipseといえば開発ツール」という固定観念が崩れる日が来るかもしれない。

(星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト)