日本オラクルは,この7月23日からJava開発ツール製品「Oracle JDeveloper 10g」を出荷開始する。この開発ツールは,JSF(JavaServer Faces)にいち早く対応する点と,正規版のほかに1年間限定で1980円という破格の値付けのパッケージを用意することで話題となった。そこで同製品でのJSFフレームワーク対応と,1980円という値付けの意図について,日本オラクルに取材した。

独自フレームワークADFを搭載,StrutsやJSFにも対応へ

JDeveloper10gの技術上の特徴は,Oracle ADF(Oracle Application Development Framework)と呼ぶ開発フレームワークを備える点である。JDeveloper10gは,ADFのための開発ツールであるという見方もできる。

「ADFのメリットは,ViewとModelの技術が変更可能なこと。ViewのレイヤではStrutsやJSFそれにSwingにも対応する。ModelのレイヤーではEJBやそれ以外のデータ・アクセス手法をサポートする」(日本オラクル サーバープロダクト部 プロダクトテクノロジーグループ の杉達也 担当マネジャー)。

ADFは,既存のフレームワーク(Struts,JSFなど)をMVCモデルの要素技術として利用しつつ包含できる点が特色である。ADFのコンセプトは,JSR-227(A Standard Data Binding & Data Access Facility for J2EE)として標準化作業の過程にある。

「JDeveloper10gはJSF(JavaServer Faces)対応の開発ツール」と記述した記事がいくつか出ているが,その意味はJDeveloper10gが備えるADFが,ViewフレームワークとしてJSFにも対応可能であることである。ただし,7月23日に出荷するバージョンのJDeveloper10gでは,JSFは製品には含まれていない。ただし「JSFランタイムを別途ダウンロードしてJDeveloper10gと組み合わせることは可能」という。

1年限定1980円で提供,「Oracle開発者に使ってもらいたい」

日本オラクルは,同ツールを12万4400円(税別)で販売する一方,まったく同じ内容で利用期間を1年限定としたバージョンをソースネクストが1980円で販売するという異色の販売戦略を打ち出した。その狙いは何なのか。

「日本国内にはOracle Masterが12万人,OTN会員が25万人いる。この開発者層が,OracleのJavaツールに触れるチャンスを作りたかった。Eclipseのように,まず個人として利用が始まり,組織的な利用に進むという流れを作りたい」(マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ西脇資哲 担当シニアマネジャー)。

JDeveloper10gの活用のポイントは,この製品が内包するフレームワークADFの使いこなしにあるといえるだろう。ADFのポイントは,POJO(Plain Old Java Object),つまり通常のJavaBeanが,ある時はユーザー・インタフェース用のオブジェクトとなったり,ある時はデータ・モデル用のオブジェクトとなる点にある。上手に使いこなすことができれば,無駄なコーディングを省いたシステム開発が可能になると期待できる。ただし,ADFはJDeveloper10gで初搭載となる新しい技術であるだけに,開発者支援の充実が望まれる。日本オラクルでは,日本語による解説ドキュメントや,ADFの使いこなし方などの資料を現在準備中という。

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