12月13日、オラクルがピープルソフトを買収することが決まった。2003年6月から延々と続いていた両社の攻防はついに決着した。買収価格の引き上げ、出資比率引き下げ条項を巡る裁判、ピープルソフトCEOの解任など、見せ場が多かった反面、何のための買収なのか、オラクルの買収目的は依然として謎である。

 オラクルのラリー・エリソンCEOは「合併は大変大きな効果をもたらす。オラクルはより多くの顧客を獲得し、アプリケーションの開発とサポートにもっと多くの投資ができるようになる」と述べている。この理屈はよく分からない。オラクルは自社のアプリケーション製品に加え、ピープルソフト製品、さらにピープルソフトが買収していたJDエドワーズの製品まで抱えることになる。これらの製品はもともと市場で競合しており補完関係はない。当然、開発やサポートに以前よりお金がかかるが、それは当たり前である。

 買収効果を出すには、コスト削減をするしかない。エリソンCEOは「営業・マーケティング費用を削減できる」と米メディアにコメントしている。確かに注文をとる営業担当者は削減できるだろう。一人の営業担当者がオラクル製品を使っている顧客とピープル製品を使っている顧客を担当することは可能だからだ。

 では一番金がかかる製品開発費はどうやって削減するのか。一番よいのはピープルソフト製品とJDエドワーズ製品の機能強化を止め、両製品の既存顧客のサポートだけを続けていくことだ。サポート費(保守費)は利益率が高い。後継製品の開発を止めてしまえば、オラクルは利益率を高めることができる。

 実際、買収劇の当初、エリソンCEOは買収に成功後、ピープルソフト製品を消滅させるかのような発言をして批判されていた。その反省からか、今回の買収合意発表文の中でエリソンCEOは次のように述べている。

 「私たちはPeopleSoft 8を強化し、PeopleSoft 9を開発し、JD Edwards 5を強化し、JD Edwards 6を開発する予定です。オラクルは世界中にいる既存のJD EdwardsやPeopleSoftの顧客へのサポートを直ちに拡張・強化します」

 謎は深まるばかりである。