16日の日本経済新聞夕刊に、米JPモルガン・チェースが情報システムのアウトソーシングを止めるという記事が出ていた。米IBMと締結していた、7年間で約50億ドルという契約を解消し、IBMへ移籍させていた社員たちを2005年から呼び戻す。

 アウトソーシング中止の決定は、JPモルガンがバンク・ワンと経営統合したことがきっかけである。統合にあたって、情報システムに関する方針を見直したところ、「自前でインフラを管理したほうが有利」となった。

 この新聞記事を読んで、取材意欲が喚起された。中止に至った意思決定の変化、IBMに支払うであろう違約金の額、呼び戻しに社員がすんなり応じるかどうか、など知りたいことが多い。時間とお金に余裕があれば直ちにニューヨークへ行きたいところであるが、そうもいかない。

 これまで何回か書いたが、情報システムのアウトソーシングに関する筆者の見解は「必要悪」というものである。情報システムの企画設計開発運用保守、これらすべては本来、顧客企業が自社社員でやるのが理想と考えている。できればプログラミングまで自社社員でやったほうがよい。力さえあれば自分でやるのが一番早くしかも安いからだ。

 しかし現実にはこうした体制をとれる企業はほとんどいない。外部のソフト会社など協力会社を使わざるをえない。とはいえ情報システム部門ごとアウトソーシングするのは最後の手段である。

 アウトソーシングに踏み切ることを決めた企業に「止めたほうがよい」などと言うつもりはない。ただしアウトソーシングの理由として「情報システムはシステムの専門家に任せ、当社は本業に集中する」というのはどうかと思う。

 情報システムは企業の神経系統である。手足のように直接仕事をしてお金は稼いでこないし、頭脳のように企業戦略を考えてくれるわけではない。しかし、神経がなくては生きていけない。神経だけを体から引き剥がし、赤の他人に委ねるということの難しさを多くの経営者が理解してほしいと思う。