この一文はテレビ朝日本社ビル一階の受付前で書いている。ここである作家の方に会う用事があったからだ。

 用事と新雑誌「日経ビズテック」はあまり関係無かったが、最近は人に会うと必ずビズテックのことを持ち出すようにしている。そこで日経ビズテックを渡し、「どのようにして技術をビジネスに結びつけるべきかを考える雑誌です」と説明した。

 すると作家の方はいきなり、「構想力でしょう、それは」とおっしゃった。そして「とにかくどれだけ幅広く考えられるかが勝負ではないですか。でも余計なことを考えていると技術をなかなか極められない。技術とビジネスの両方を一人に考えろというのは無理かもしれませんね」と続けられた。

 その作家の方は技術の専門家ではないし、企業とか経営関係の本を書かれているわけでもない。しかし会って数分で本質的なことを言われた。作家の観察力というか問題把握力は実に鋭いものである。

 確かに技術者としても経営者としても卓越した人というのはそう多くはない。筆者は別にスーパーマンを待望しているわけではない。ただこれまで書いた内容がそうとれる面もあったようだ。例えば先日、日経ビズテックの一冊目を読んだ大学教授に「デザインとマネジメントの両方をやれ、というのは理解できるものの現実には無い物ねだりではないか」と言われた。

 筆者の考えはこうである。別に一人で全部を担当する必要はない。技術を極めた人と、ビジネス構想力がある人、そしてマネジメントができる人が組んで、チームとして成果を上げればよい。ただ、それには技術の人もビジネスのことを理解すべきであるし、ビジネスを推進する人も技術を理解すべきである、ということだ。