我ながらしつこいが,「マネジメント」の日本語訳として「管理」は適切ではないという話をまた書く。昨日の前書きで紹介したブログの中に,「プロジェクトマネジメントはプロジェクト管理ではない」という指摘があった。これに対し,ある方から「プロジェクト管理という表現が一般的ではないか」というご意見を頂いた。

 日本語訳を考える前に,マネジメントとは何かを調べる必要がある。筆者は,マネジメントを発明したとされるピーター・ドラッカー氏の定義に従っている。ドラッカー氏は「マネジメントをその役割によって定義しなければならない」とし,役割を三つ挙げている。

 第一は,組織に特有の使命,目的を果たすこと。第二は,仕事を通じて働く人たちを生かすこと。第三は,社会の問題について貢献する,である。まとめると,「組織の人たちを生き生きとさせ,高度な成果を上げる」ことがマネジメントというわけだ。

 ドラッカー氏は,「(マネジャーは)オーケストラの指揮者に似ている」という。指揮者は,各奏者が持つ強みを発揮させるとともに弱みを消し,各奏者を統合して生きた音楽を創り出す。マネジャーも同様である。

 こうした仕事の呼び名として,「管理」「管理者」が適切かどうか。いくつかの国語辞典や漢和辞典で「管理」を引いてみたが,やはりマネジメントとは違うと思う。もっとも,ある辞典で「マネジメント」を引くと,「管理」と出ており,やはりマネジメントを管理と訳すのが一般的であるようだ。だが筆者は意地でも管理とは書かない。

 ただし,マネジメントという表現はいささか文字数が多い。プロジェクトマネジメントと書くとさらにカタカナが増える。管理を代替できるよき訳語はないだろうか。ちなみに「指揮」を辞書で調べると,「全体の行動の統一のため,命令して人々を動かすこと」とある。これこそ管理であって,マネジメントではない。