新雑誌「日経ビズテック」特別編集版の作成作業が大詰めを迎えている。筆者が書くべき記事を除いて、ほぼすべての記事の原稿が出そろった。編集部のスタッフや社外の方が書いた原稿を査読しつつ、自分の原稿の準備をしなければならない。筆者が書こうと思っている原稿は二本あり、そのうち一つのテーマはおなじみの西暦2007年問題である。

 1年前の4月に、ITProをはじめとするWebサイトで、2007年問題のことを書いた。ベテランのシステム担当者たちが引退し、巨大かつ複雑なシステムがブラックボックスとして残される。このブラックボックスに修整を加えようとすると、システムが不具合を起こす危険がある。こういった既存システムの肥大化・老朽化と、担当者の消失(後継者不足)を一言で表現したものが2007年問題である。2007年というのは、団塊の世代でもっとも数が多い1947年生まれの方々が60歳になる時期のことである。象徴的な時期としてあげているだけで、別に2007年になっておもむろに何かが起きるわけではない。

 2007年問題の記事は、ITPro本体とこの情識、日経ビジネスEXPRESS、BizTechイノベーターでほぼ同時期に公開した。それぞれの読者が意見を書き込んでくれ、昨日集計して見ると、意見は100件を超えていた。本来であれば昨年の5月ごろ、結果をまとめておかなければならなかったが、諸般の事情により、遅れてしまった。新雑誌の創刊に合わせ、なんとか意見集約をしたいと思っている。

 何人かの読者から指摘を受けた通り、この問題には今に始まったことではない。情報システムが出現して以来、稼働後の保守体制、保守要員の継続性といった問題は常に起きていた。ただ、ここ数年の技術変化が大きかった上に、企業が情報システム担当者の育成にお金をかけなくなったことから、担当者の継続性問題が表に出てくる危険が高まったと言える。

 ところでこの春を迎えると、筆者の記者生活は20年目に突入する。この間、ずっと情報システムの世界を見ることができ、非常によかったと思っている。20年間で世界は様変わりしたと書きたいところであるが、正直言って、変わったものを探す方が難しい。情報システムにまつわる構造的な問題は19年前から不変である。西暦2007年問題に関する読者の意見の中に、「しょうもないことをいつも書くな」というものがあったが、これからも執拗に同じことを書く所存である。

 1年前の5月7日に、以下のようなことを書いていたので再掲する。文末に読者への依頼が書いてあるが、残念ながらこの1年、実例の報告はない。

 昨日(2003年5月6日)、ある人とソフトウエア・エンジニアリングやプロジェクトマネジメントについてあれこれ話をしていたときに、「10年以上も前から重要なテーマとして言われていたのに、なぜ日本では定着しないのか」という疑問を呈された。

 この疑問への回答はいろいろ考えられる。筆者は、「顧客が安心感を求めて大手メーカーやインテグレータに曖昧な発注をし、大手が下請けソフト会社に仕事を投げる構造が変わらないからではないか」と答えた。

 続いてこの構造を壊すにはどうしたらよいかという話になった。こちらも難しい問題だが、筆者はこう答えた。「実力あるソフト会社に直接発注した結果、通常より早く安く開発ができた、という実例をたくさん作ること」。こうした実例をご存じの方はぜひご連絡いただきたい。