エンタープライズ・アーキテクチャという言葉を最近耳にする。エンタープライズは、適当な日本語訳がない言葉である。辞書を引くと、「重大な企て」、「大胆な目論見」、あるいは「進取の気象」と訳されている。普通は、事業あるいは企業という意味で使われる。元の意味を考えると、なんの計画も持たず、無為無策のまま存在している企業や官公庁はエンタープライズとは呼べないことになる。ところで、世界最大のエンタープライズとは一体何であろうか。

 正解は、米国防総省(DoD)である。総予算を見ても、総従事者数を見ても、世界最大の組織という。そう記してあった資料が手元にないので、記憶に頼って書いているが、米軍そのものの人数も含めての数字だったかもしれない。とにかく重大な企てをしている組織であることは間違いない。

 昨今の米国の言動から、DoDと聞くと、顔をしかめる向きもあろうかと思うが、エンタープライズ・アーキテクチャはもちろん、多くの情報技術がDoDから生まれていることは認めざるを得ない。世界最大のコンピュータ・ユーザーはDoDなのである。

 DoDはまた、オープンシステムの最大の支援者・利用者でもある。組織の性質上、特定のコンピュータ・メーカーの製品に依存するわけにはいかない。巨大組織でありながら、臨機応変にその形態を変える必要があり、それに伴って情報システムにも柔軟性が要求される。そこで、オープンシステムを利用したり、エンタープライズ・アーキテクチャを採用する必要性が出てくるわけだ。

 つまり、エンタープライズ・アーキテクチャがもっとも効果を発揮するのは、大規模でグローバルな組織なのである。日本企業や官公庁が取り組むことは大いに結構であるが、大規模でもグローバルでもない企業や組織の場合は、取り組む目的をよくよく考えてから着手したほうがよい。

 さて、DoDは現在、「グローバル・インフォメーション・グリッド・エンタープライズ・サービス」と称するプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトは、DoDAF(DoDアーキテクチャ・フレームワーク)というエンタープライズ・アーキテクチャに則って進められている。

 自分で書いた文ではあるが、上記の4行だけ読んでもカタカナばかりで何のことかよく分からない。幸い、2月中旬に、このプロジェクトを担当しているDoDの責任者が来日する。彼にインタビューすることになっており、おって本欄でプロジェクトの内容を紹介したい。
 
 DoD幹部の講演を含むフォーラムが2月19日に開催されるので、筆者は参加しようと思っている。関心のある方はこちらをご覧いただきたい。
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