米Motorolaが,カーボン・ナノチューブ(CNT)による5インチ型カラー平面ディスプレイ(FPD)の試作品を米国時間5月9日に発表した。厚みは1インチ(約25.4mm)未満で,大画面の高精細テレビ(HDTV)向け。同ディスプレイは実際に動作し,画質/寿命/コスト面で優れているという。

 CNTは,炭素原子を直径1nm(10億分の1m)未満のチューブ状に結合させた分子。FPDなどさまざまな用途に合わせて調整可能な独特の性質を持つ。

 Motorola社は「同ディスプレイの開発は,ナノ放射ディスプレイ(NED:Nano Emissive Display)技術により可能になった」としている。NEDを利用すると,ガラス・サブストレート上に直接CNTを生成でき,優れた電子放射が可能なエネルギー効率のよい設計が行えるという。

 試作品は5インチ型のディスプレイ。総画素数1280×720ピクセル,縦横比16:9の42インチ型HDTV用ディスプレイを構成するユニットとして機能する。ディスプレイ・パネルの厚さは3.3mm。

 CRT用の蛍光体を使っており,明るく鮮やかな表示が可能という。「高い応答性,広い視野角,広い動作温度範囲など,CRTディスプレイと同等以上の特性を持つ。製造コストは液晶ディスプレイ(LCD)と同程度で,プラズマ・ディスプレイより相当低い」(同社)

 同社によると,米DisplaySearch副社長兼CFOのBarry Young氏は「NED技術を使えば,40インチ型ディスプレイ・パネルの製造コストは400ドルを切る」と見積もったという。

 「ディスプレイ・メーカーと協力してこの技術をさらに発展させ,商品に適用可能なソリューションを開発できるよう望んでいる」(Motorola社技術インキュベーション&商業化担当副社長のJim O'Connor氏)

 Motorola社は,5月22~27日にマサチューセッツ州ボストンで開催されるSociety for Information Display(SID)の第43回International Symposium, Seminar and Exhibitionで,同ディスプレイの詳細を発表する。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,Motorola社の試作したディスプレイの対角サイズは4.7インチ(約119mm)で,画素数は128×96ピクセルという。

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