米Hewlett-Packardと仏伊合弁のSTMicroelectronicsは,イタリアのカード・メーカーIncardと協調してスマート・カードに公開鍵暗号方式「IBE(Identifier-Based Encryption)」を実装する技術の開発を行なった。両社が現地時間4月25日に明らかにした。同技術は,同月26日から英ロンドンで開催される「Infosecurity 2005」においてデモが行なわれる。
スマート・カードは,公開鍵などの秘密情報を持ち運ぶ手段としても利用されている。IBEをスマート・カードに実装することにより,より実用的で経済効率に優れたビジネス通信アプリケーションの作成が可能になるという。3社は,同技術が電子政府,電子商取引,ドキュメント管理,アクセス制御,個人認証トークンといった分野において利用されることを見込んでいる。
従来の公開鍵暗号方式「PKI(Public Key Infrastructure)」では,ランダムに計算された数字で構成される相手の公開鍵(デジタル証明書)を入手する必要がある。IBEでは,証明書を交換する必要なく,公開鍵をユーザーのIDや役割りに関連付けて自由に選択することができる。大掛かりなインフラも必要ない。
同技術は,STMicroelectronics社のST22L128チップを搭載するIncard社のスマート・カード「JsEC」に実装される。JsECは,IBEメッセージを数秒で複合化することができる。Incard社は,すでにJsECをソフトウエア・アプリケーションに統合している。
Incard社戦略マーケティング・マネージャのAlessandro Scognamiglio氏は,「JsECは,急速に拡大が予想される特化された市場を狙ったもの。同製品により,ネットまたはローカルのセキュリティを保証する認証,証明書,電子署名といった異なるオペレーションを明確かつ容易に管理できるようになる。Windowsオペレーティング・システムと統合することにより,ユーザーは,マウスをクリックするだけで署名を提供したり,認証を行なうことができるようになる」と説明している。
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