「米国の特許制度を改正するべきだ」。米Microsoftが米国時間3月10日に,米国特許制度の問題と改善に関する見解を明らかにした。同社法務顧問のBrad Smith氏が,政策研究所の米American Enterprise Institute for Public Policy Research(AEI)で基調講演を行ったもの。

 同氏は,改革が必要と考える領域として主に以下の四つを挙げた。

■特許の件数増加における高い品質の確保
新技術の発明ペースが加速化し,企業のグローバル化とあいまって,特許出願件数は膨大な数にのぼる。米国特許商標局(USPTO)によると80年代から出願件数は3倍に増えており,同局は現在,年間35万件の申請を処理しなくてはならないという。そのため,PTOの限られた人員と審査員で,特許の品質を確保することは困難だ。

■過度の訴訟および悪質な訴訟の抑制
米国で起こされる特許侵害訴訟は,80年代初頭には年間1000件に満たなかったが,現在では年間2500件を超える。「運が良ければ勝利する」ことを狙って,効力の弱い特許の保持者が簡単に訴訟を起こせるようになっている。訴訟が始まれば,結論が出るまで業務を停止しなければならないこともあり,「歴史的に技術革新を奨励してきた米国のシステムが,技術革新を阻んでいる」(同社)。

■特許法の国際的調和
世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)に加盟している182カ国にはそれぞれ自国の特許法がある。最も重要な部分については類似しているが,優れた特許制度を機能させるための実際的な部分が異なっている。調和に欠けていることは,世界経済の効率低下につながる。「世界に米国の制度を採用しろと提案しているのではない。米国がパートナである国々と協調するために,自国の制度に一部変更を加える必要性も認識している」(同社)

■個人発明家および小企業による出願の増加
現在の制度では,何か発明をしても,世界で特許を取得するには大勢の弁護士を雇わなくてはならない。個人発明家や小規模企業が,数十カ国の異なる制度のもとで,特許を得るのはほとんど不可能だ。また手間だけでなく,コストも重荷になっている。

 Smith氏は,米国議会が,出願料から得ている収入を他の行政分野に振り分けていることを指摘し,特許の品質を確保するためにその慣習をやめるべきだと述べた。また改正プランとして,特許審査中に第三者が意見を申し立てられるようにすることや,米国以外の国で採用している「first-to-file(最初に出願した者に特許を承認する)」方式の採用,出願料ゼロの特許申請システムなどを提案した。

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