米連邦通信委員会(FCC)は,既存地域通信事業者(ILEC:ベル系地域通信事業者)に対し,市内電話サービスへの参入を図る競合事業者にネットワーク設備を提供するよう義務付ける規制「Unbundled Network Element(UNE:アンバンドル網要素)」の適用を,米国時間12月15日に開始した。FCCが同日明らかにしたもの。

 FCCは,2003年8月21日に通信業界向け新規制「Triennial Review Order」に関する報告書を発表した。そのなかには,FCCがUNEの権限を州に委譲するという内容も盛り込んであったという。これに対し,米国通信協会(USTA)などは「重要な判断を州に委ねず,FCCが従来の法律に従って法定責任を果たす」ことを求め,ワシントンD.C.地区連邦控訴裁判所に提訴していた(関連記事12)。

 同裁判所は,2004年3月にUNEの大部分を無効と判断。米法務省の訴訟長官室は最高裁への上告を断念し,FCCがUNEの内容を見直した(関連記事)。コンピュータ業界の団体Computer Technology Industry Association(CompTIA)は,米法務省の上告断念に対し「地域電話の料金は上がり,サービス品質は落ち,IT革新は消え去る」(CompTIAのTom Santaniello氏)と述べている。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,ベル系地域通信事業者は,電気通信スイッチの割り引きなどの判断を州政府に任せないというFCCの決定を評価したという。ただし,一部業務用回線の共有の義務化については,不満を表した。

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