米AMDと米IBMは,トランジスタの動作速度向上/消費電力低減を図るストレインド・シリコン技術ベースの新しい製造技術「Dual Stress Liner」を開発した。両社が米国時間12月13日に明らかにしたもの。現行の同等トランジスタと同程度の消費電力で,動作速度を最大24%高速化できるという。

 LSI内のトランジスタを微細化すると,動作速度が向上する。その反面,漏れ電流の増加とスイッチング効率の低下により,消費電力が上がり,発熱量も増えてしまう。

 Dual Stress Linerでは,トランジスタのシリコン層をひずませて速度向上と消費電力低減を両立させた。ひずませる際に,引き伸ばす手法と圧縮する手法を使い分けることで,n型とp型の両タイプのトランジスタで性能を高められる。「既存の材料を使い,1個のLSI内にある両タイプのトランジスタの性能向上を実現できたのは,これが業界で初めて」(両社)

 製造時に新しい生産手法を必要としないので,標準的な生産設備と材料を使って迅速に量産を開始できる。さらに,シリコン/絶縁膜構造(SOI)とストレインド・シリコンを組み合わせ,より高性能/低消費電力のトランジスタ製造も可能という。

 AMD社は,将来リリース予定のマルチ・コアAMD64プロセサを含む90nmプロセス・ルールの全LSIで,段階的に同技術を採用していく。IBM社は,Power Architectureベースのプロセサを含む複数製品の90nm版で,同技術を使用する。両社とも,2005年前半に対応製品を出荷開始する予定。

 両社は,同技術の詳細を,12月13~15日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催される2004 IEEE International Electron Devices Meetingで発表する。

 なお同技術の開発には,AMD社とIBM社のほか,ソニーと東芝も協力した。

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