ピア・ツー・ピア(PtoP)ファイル交換ソフトウエア「Kazaa」が著作権侵害にあたるとして,音楽業界が同ソフトウエアのベンダーであるオーストラリアのSharman Networksを相手取って起こしている訴訟の審理がオーストラリアのシドニー裁判所で行われている。Sharman社側の証人として法廷に立ったカリフォルニア大学バークレー校コンピュータ・サイエンスおよび情報管理学部教授のDoug Tygar氏は,「法的メカニズムだけでは,この問題は解決できない」と述べた。Sharman社がオーストラリアで12月10日に明らかにしたもの。

 同裁判所のWilcox判事は,「われわれは著作権保護されていないものを交換しているユーザーの権利を奪うつもりはない。しかし,そうとうな件数にのぼる著作権侵害行為を,撲滅することができないにしても,せめて減らしたいと考えている」と述べ,著作権を保護しつつ,PtoP技術を通じた情報交換を可能にする最善策について,Tygar氏に意見を求めた。

 Tygar氏は,「ユーザーの著作権侵害を防ぐ技術こそが,最良の方法を生み出す」と答え,著作権侵害行為の特定に役立つ技術として,デジタル著作権管理や電子透かしを挙げた。同氏は,「どの手段で情報を社会に提供するかは,情報所有者あるいは情報伝達者が決めることだ。法律や裁判所の規制だけでは,十分な解決策にはならない。財産権と言論の自由はともに高く尊重されるべきものであり,バランスを保つことが必要だ」と述べた。

 さらに同氏は,ファイル交換ソフトウエアを使用したユーザーの著作権侵害行為をフィルタリングする効果的な手段はないとの考えを示し,「Kazaaには確かに中央サーバーが存在しなかった」と答えた。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,同氏は「Kazaaのシステムでは,ユーザーの居住国がアドレスに示される通りかどうかを確認することはできない。Kazaaが配信ネットワークに使用している米Akamaiの技術なら,KazaaのWebページにアクセスしたユーザーのIPアドレス・リストを作成することが可能だ。ただし,ユーザーがどのようなファイルを交換しているかについては,Akamai社でもわからない」と説明した。

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