ドイツのSiemens傘下の米Siemens Communicationsは,移動体通信を経由したリアルタイムのデータ伝送速度で1Gビット/秒を達成した。同社が現地時間12月7日に発表した。

 Siemens社によれば,現在,モバイル機器にもっとも速い無線接続を提供するWLANネットワークの速度はおよそ50Mビット/秒となっている。今回達成した速度は,その20倍に相当する。この記録的な速度は3本の送信アンテナと4本の受信アンテナで構成するインテリジェントなアンテナ・システムと直交周波数分割多重(OFDM)技術と組み合わせることにより実現された。研究者は,これらの技術がW-CDMA以降の次世代移動体通信に向けて大きな可能性があるモジュールであると考えているという。

 同社によれば,2015年までに次世代移動体通信がデビューすると予想されるが,それまでに音声,データ,画像,マルチメディアの転送能力は控え目に見積もっても10倍に強化する必要があるという。Siemens Communications社のMobile Networks部門社長のChristoph Caselitz氏は,「将来の移動体通信システムでは,できるだけ周波数帯を効率的に利用して転送に使われる消費電力を最低限に抑える必要がある」と説明する。

 「当社の試験的なシステムにより,インテリジェント・アンテナがOFDMと組み合わせた場合に,どれほどの力を発揮するかを示すことができた。その過程で,将来の移動痛心体システムにとって重要なモジュールを作成することができた」(同氏)

 インテリジェント・アンテナでは,「MIMO」(multi input multi output)技術を採用している。従来のアンテナでは,それぞれのアンテナが別の周波数データの伝送を行なっていたが,MIMO方式では複数のアンテナが同時に異なるデータの流れを処理できる。そのため,高価な周波数帯のリソースをより効果的に利用してデータ転送速度を数倍にすることができる。

 現在,複数アンテナ・システムが一般的に利用されていない理由として,同社は受信エンドで非常に高い処理能力が必要とされることを挙げている。複数アンテナによって同時に転送された情報は,複数の受信アンテナで受信され,リアルタイムで受信ディバイスで再構成される必要がある。この処理は,現在移動体通信業界で採用されている一般的なチップの処理能力を超えている。Siemens社の研究者は,現在のハードウエア・モジュール上に効率的に実装できる新しく最適化された信号処理アルゴリズムを開発することによってこの課題を克服した。

 同社が開発した試験的な1Gビット転送システムは,カンヌで開催される「3GSM World Congress 2005」において公開される予定。

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