米IBMが,ストレインド(ひずみ)ゲルマニウム(Ge)を使ってトランジスタの動作速度を3倍高める技術を開発した。IBM社が米国時間12月6日に明らかにしたもの。同技術は,現行のCMOS製造プロセスを利用できる。

 トランジスタを高速化する技術として,ストレインド・シリコン(Si)という手法を使うことがある。これは,トランジスタ内で電流が通るチャネル部分のSi層に応力を加えてひずませると,同層内でキャリアの移動度が向上する現象を利用している。この技術をGeに応用してストレインドGeを使えば,Siの場合よりもトランジスタの性能は高くなる。ただし,従来の半導体製造技術でストレインドGeを利用する手法は,これまで考案されていなかったという。

 同社は,従来のCMOS製造プロセスを用い,チャネル部分にストレインドGe層を設けることに成功した。「Geの導電率はSiより高いことが以前から知られており,当社が開発した製造プロセスでGe層をひずませたことで,より高い性能を実現できた」(同社)

 チャネル材料としてGeを使ったことで,LSI内の回路を微細化し,動作速度をさらに高めることも可能という。同社は,32nm以下のプロセス・ルールにも同技術が適用可能とみている。

 さらに,Geは二酸化シリコン(SiO2)に代わる高誘電率(high-K)ゲート絶縁膜材料として使える可能性もあるという。

 同社は,現行CMOS製造プロセスでストレインドGeを利用する技術の詳細を,2004年12月13~15日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催されるInternational Electron Devices Meeting(IEDM)で発表する。

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