米IBM,東芝,ソニー,ソニー・コンピュータ エンタテインメント(SCEI)が,共同開発している次世代コンピュータ/デジタル家電向けマイクロプロセサ「Cell」(開発コード名)の仕様などを,米国と日本でそれぞれ現地時間11月29日に発表した。4社は,2005年2月6~10日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催される国際固体素子回路会議(ISSCC)で,詳しい技術情報を解説する4件の論文を発表する予定。

 Cellは,IBM社の64ビットPowerプロセサ・コアをベースとする新型プロセサ。IBM社,東芝,ソニーが2001年に開発計画を発表し,テキサス州オースチンに設立した共同研究所で設計/開発を進めている。コアを複数内蔵し,浮動小数点演算の処理性能が高いという。

 同プロセサのそのほかの主な特徴は以下の通り。

・複数のOSに対応

・メイン・メモリーおよび周辺LSIとのあいだを接続するバスの帯域が広い

・柔軟性のあるI/O用インタフェースを内蔵

・リアルタイム・リソース管理システムを搭載

・知的財産保護を目的とするセキュリティ・ハードウエア・システムを内蔵

・90nmプロセス・ルール,シリコン/絶縁膜構造(SOI)を採用

・省電力を実現するため,正確に動作周波数を制御する機能を搭載

 「複数チャンネルの高精細放送や,メガピクセル級のデジタル・カメラ,高解像度CCD/CMOSセンサーで撮影した映像など,大量のリッチ・コンテンツを扱うには,膨大なメディア処理をリアルタイムに行う必要がある。そのためには,3次元環境でより洗練されたGUIを実現することがこの先重要になる。こうしたリッチ・アプリケーションを処理しようとすると,現在のパソコン・アーキテクチャは,プロセサ能力とバス幅の両面で限界に近づいている」(ソニー執行役副社長兼COO,SCEI社長兼グループCEOの久多良木健氏)

 「デジタル家電の機能と性能を飛躍的に向上させる必要がある。マルチ・プロセサ・アーキテクチャを採用するCellプロセサは,そうした要件に合致しており,高度なメディア処理能力を実現できる」(東芝執行役常務,社内カンパニーであるセミコンダクター社社長兼CEOの室町正志氏)

 IBM社は,同プロセサの試験生産をニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mmウエーハ対応半導体製造工場で2005年前半に開始する。同プロセサ・ベースの最初のIBM社製品は,SCEIと共同開発中のワークステーションになる予定(IBM社の関連発表資料)。

 同プロセサを搭載するそのほかの製品は,2006年に,ソニーがブロードバンド・コンテンツ用ホーム・サーバーと高精細テレビ(HDTV)システムを,東芝がHDTVなどを利用可能とする。

 さらに,米メディアの報道(CNET News.com)によると,ソニーは同プロセサでゲーム機「PlayStation」の次世代製品を開発し,実際に動作する試作機を2005年5月に公開するという。

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