ドメイン名やIPアドレスの管理を行っている非営利組織のICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は,米VeriSignが同組織を相手取って起こしている訴訟を国際的仲裁機関で審議するようパリ(フランス)の国際商工会議所(ICC)に調停要求を提出した。ICANNが米国時間11月12日に明らかにしたもの。「VeriSign社とのあいだで交わされている契約『.net Registry Agreement』の条項に沿った裁定を希望する」(ICANN)

 VeriSign社は,ICANNが契約上の権限を超えて不当に同社の事業を規制し,同社との契約および協定に違反したとして,今年2月にカリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提訴。「技術的共同体であるべき契約および協定から逸脱することにより,ICANNはドメイン名システムの取り締まり機関になることを不当に試み,インターネット・ユーザーの利益とインターネットの成長につながる新たなサービスをもみ消した」(VeriSign社)と非難した。連邦地裁はVeriSign社の主張を退ける判断を下したが,その後VeriSign社はカリフォルニア州裁判所に申し立てを行った。

 この背景には,2003年にVeriSign社が実施したナビゲーション・サービス「Site Finder」の騒動がある。同サービスは,ユーザーが実在しないURLを入力した場合,自動的に同社検索ページに誘導(リダイレクト)するものだったが,スパム遮断機能などに影響を与えるとしてネットワーク運営者の反発を浴び,ICANNの停止要請を受けて,閉鎖に至った。

 またICANNは同日,VeriSign社の申し立てに対する答弁書をカリフォルニア州裁判所に提出するとともに,VeriSign社が「.com」ドメインに関する契約に違反したとして同社を反訴した。

 「これは,私的な口論ではなく,インターネット・コミュニティに直接影響を及ぼす問題だ。争点となるのはICANNとVerisign社間で締結したレジストリ契約だが,同契約は,トップ・レベル・ドメイン(TLD)のレジストリがインターネット・コミュニティの利益のためにレジストリ業務を遂行するよう,コミュニティが(ICANNを通じて)監視できる体制を提供するものだ」(ICANN)

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