米映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America)は,映画の不正なオンライン配信を利用した複数の個人に対し,民事訴訟を申し立てる予定である。同協会が米国時間11月4日に,カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)Film and Television学部のSchool of Theaterで明らかにしたもの。

  訴訟の申し立ては,MPAA加入企業が11月16日より開始する。「著作権法にもとづくと,法定損害賠償額は,対象となる映画作品1本につき3万ドル。故意の著作権侵害行為が認められた場合は,同15万ドルにのぼる」(MPAA)

 米メディア(NYTimes)によると,MPAAが個人を提訴するのは今回が初めてだという。

 MPAA会長兼CEOのDan Glickman氏は,違法な映画配信について,「110年の歴史を持つ映画制作業界の経済基盤を揺るがす最悪の脅威だ」と非難。「映画を盗んだ(不正な手段でダウンロードした)ユーザーは,自分たちの身元がばれることもなく,その行為は罪に当たらないと考えているが,それが間違いだ。われわれは,彼らの身元を割り出し,追跡できる。今回の訴訟がそれを証明する」(同氏)

 ちなみにUCLAは,校内における不正なコンテンツ利用を厳しく取り締まった主要な機関の一つ。違法に映画や音楽を複製および配信した個人を特定し,パソコンから問題のコンテンツを削除するまでインターネット・アクセスを禁じるという対策を実施した。

 政府関連機関が発表した調査によると,著作権保有物の海賊版などを含む偽造商品が米国経済に与える損害は,年間2500億ドルにのぼるという。MPAAの推計では,オンラインの違法ダウンロードを含まない場合でも,映画の著作権侵害物によって,業界は年間35億ドルの被害を受けている。

 「われわれは,デジタル配信が今後の大きな動きであることを理解しており,映画制作会社は合法的なダウンロード・サービスをサポートしている。しかし,違法な配信を行い,消費者に高品質の映画を便利な方法で提供するはずの正当な技術を汚す行為は許されるものではない」(Glickman氏)

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