米Gartnerは米国時間10月20日,RFID(無線IC)タグの今後の展望について調査した結果を発表した。それによると,近い将来,単価5セントのRFIDタグが実現する可能性が出てきたことから,同技術は小売り分野の期待を集めているという。

 しかし,同社リサーチ担当副社長のStephen Smith氏は,「企業は“5セント・タグ”の登場を待つのではなく,現在のタグが自社ビジネスにどのような恩恵をもたらすことができるのるか,検討すべきだ」と指摘する。

 また同氏は,「RFIDを利用して,世界規模のサプライ・チェーンにおけるデータ管理を行えることが,ビジネス戦略の観点からみた最大のメリットになる。将来は,製品中心の情報管理が実現するだろう」と予測した。

 Gartner社によると,企業は段階的にRFIDを導入する見通しだ。まず,RFID対応のビジネス・プロセスを導入するが,この時点では,既存のビジネス・プロセスの範囲内ということもあって,RFIDがもたらす恩恵は小さい。次に,RFIDを中心に据えたビジネス・プロセスの導入と,ビジネス・プロセスの抜本的な再構築が始まると予測する。

 「RFIDの普及とそれに伴うメリットの享受は,一夜にして実現するのではない。高額な資本支出,不完全な読み取り率,実用性が不明なシステムや仕様に対する不安など,さまざまな課題を克服しなくてはならない。このため今後10年間は,バーコードとRFIDが共存する期間になるだろう」(Smith氏)

 また同氏は,“5セント・タグ”に関して次のように述べる。「低価格のタグ製造には,チップの小型化が不可欠だ。しかし,小型チップは組み立て費がかさむという別の問題がある」(同氏)

 現在,電池を内蔵しないパッシブ・タグの価格は40セント~10ドルの範囲。また電池搭載型のアクティブ・タグは,4~5ドルから上限は数百ドルという。「2009年に,競争的なRFIDタグの価格は20セントになる」(Gartner社)

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