米IBMが,インターネット・インフラ・ソフトウエアの新版「WebSphere Application Server Version 6」を米国時間10月6日に発表した。ネットワークの小さな故障から停電,自然災害までさまざまな障害を自動的に検知し,従来のシステムだと復旧に数時間から数日かかるようなWebベースの業務トランザクションを数秒で保存/処理できるという。

 WebSphere Application Server Version 6はJ2EEアプリケーション・サーバーであり,ほかのソフトウエアを動作させるOSよりも上の階層に位置する標準化されたミドルウエアに相当する。自律コンピューティング機能を備え,自ら設定/修復/最適化/保護できるハードウエアとソフトウエアによる自己管理型ITインフラを実現できる。「複雑さが増しているITシステムの管理作業について多くの部分を自律制御させることで,ユーザー企業は(IT管理作業ではなく)事業運営へのリソース集中が可能となる」(IBM社)

 障害を見つけると,IBM WebSphere Application Server Version 6はあらかじめ指定された代替サーバーにデータを自動転送する。代替サーバーは,元のサーバーと同じデータ・センター内に用意できる。また,停電や自然災害など大規模な障害発生に備え,まったく別のところに用意されている代替サーバーにインターネット経由で情報を送る構成も選べる。

 新版のそのほかの主な強化点は以下の通り。

・開発/展開用ウィザード:
 新たに導入したウィザード・ベースの開発/展開ツールにより,アプリケーション開発などの作業をドラッグ&ドロップするだけで処理できる。手作業のコーディングが不要になるので,これまでアプリケーション構築に必要だったプログラミング作業の多くを行わなくて済む

・Webサービス標準への対応:
 セキュリティ仕様WS-Security,トランザクション処理仕様WS-Transactionのほか,Webサービスの相互接続性確保のためWS-I Basic Profile 1.1にも対応した

 さらに同社は同日,中小企業向け製品「WebSphere Application Server Express Version 6」についても明らかにした。同製品とWebSphere Application Server Version 6は,いずれも2004年末までに利用可能とする。

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解説●自律コンピューティングの理想と現実(上)
自律コンピューティングで火花(上)

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