米Microsoftが欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)から命じられた制裁措置の停止を求めている問題について,ルクセンブルグの欧州第一審裁判所で2日間の審問が行われる。1日目の審問が開かれた現地時間9月30日に,Microsoft社がコメントを発表した。

 ECは,Microsoft社が欧州市場におけるパソコンOSの独占的立場を悪用し,サーバーOSやメディア・プレーヤの販売に関して欧州の独占禁止法に違反したと判断し,3月24日に,4億9720万ユーロの制裁金支払いをはじめ,Windowsのインタフェース情報の開示,「Windows Media Player」非搭載版OSの提供などを命じる制裁措置を発表した。Microsoft社はこの決定を不服として6月に提訴しており,EUは制裁措置の発令を一時差し止めしている。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,Microsoft社はECとの係争に結論が出るまで制裁措置執行を保留するよう求めているが,それには数年かかるとみられる。ECは一時差し止めについて,「是正措置が無意味になる。なぜなら,市場が変化してしまうからだ」と反論している。

 審問に先立ち,Microsoft社上級副社長兼法務顧問のBrad Smith氏は「この審問がわれわれ全員にとって建設的なものになることを期待する。当社の見解を,客観的かつ公正な当局に直接伝える」と述べ,「自信がある」と付け加えた。

 また同氏はECの裁定について「欧州の何百という企業,何千というソフトウエア開発者,何百万という消費者に損害を与えるものだ」と非難した。「消費者は,よりシンプルなコンピュータを望んでいる。われわれは,より多くの価値を消費者に提供しなければならない。当社は2日間の審問において,ECの選んだ手段が技術革新を妨げ,特に欧州の経済成長を遅らせるであろうことを証明する。われわれはもっと良い協力関係を築くことができるし,また,そうするべきである」(同氏)

 なお,前述の米メディアの別の記事(CNET News.com)によれば,1日目は,Microsoft社のOSと他社製ソフトウエアとの互換性について重点が置かれた。裁判所所長のBo Vesterdorf氏が,競合社に技術を明かした場合,Microsoft社が回復不能なダメージを受けるかなどについて質問したという。2日目はWindowsに組み込まれているメディア・プレーヤ機能に関して話し合う予定。裁判所は差し止め請求に関する判断を,数週間~数カ月以内に下す見込みである。

 1日目の審理を終えて,Smith氏は「たいへん建設的な一歩を踏み出した。裁判所がこの訴訟のカギとなる問題を見極めているのは明らかだ。このやりとりで,EUが主張する相互操作性の問題には,根本的な証拠が一部欠落していることが分かった」と述べた。

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[発表資料(1)]
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