米Open Source Risk Management(OSRM)は,Linux使用における特許侵害の可能性について調査した結果を米国時間8月2日に発表した。それによると,Linuxカーネルは裁判所によって有効性を認められたソフトウエア特許は侵害していないが,場合によっては特許侵害訴訟を起こされる可能性があるという。

 特許監視団体である米Public Patent Foundationの設立者兼執行ディレクタで,フリー・ソフトウエア推進団体の米Free Software Foundation(FSF)で上級顧問を務めるDan Ravicher氏が,これまで訴訟につながったすべての米国ソフトウエア特許を調査し,Linuxカーネルに含まれる技術によりエンド・ユーザーが特許侵害訴訟に巻き込まれる可能性について検討した。OSRMによれば,「Linuxカーネルは,裁判所によって効力を認められたソフトウエア特許を侵害していない」との結論に至ったという。

 ただしRavicher氏は,まだ裁判所の判例で有効性が認められたことのない283件の特許について,Linuxエンド・ユーザーに対する特許侵害訴訟に利用される可能性があることを指摘している。Ravicher氏によれば,283件のうち約3分の1は,米Cisco Systems,米Hewlett-Packard(HP),米IBM,米Intel,米Novell,米Oracle,米Red Hat,ソニーなど,Linuxの取り組みに投資している大企業が保有するものだが,27件は反オープンソースの米Microsoftが保有している。

 「Linuxを利用する企業にとって,特許問題は財務リスクをもたらす。実際に特許を侵害しているか否かにかかわらず,訴訟を起こされると平均300万ドルの費用がかかってしまう」(Ravicher氏)。

 ちなみにOSRMは,Linuxを利用している顧客が著作権侵害で提訴された場合の訴訟費用を負担する保険型サービスを提供している。

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