米General Electric(GE)の研究組織であるGE Global Researchは,カーボン・ナノチューブを使ったダイオードの開発に成功した。GE Global Researchが米国時間7月7日に明らかにしたもの。「世界最高の性能を持ち,大きさも世界最小」(GE Global Research)という。
ダイオードとは,電子デバイスを構成するための基本的な半導体素子の1つ。GE社の開発したカーボン・ナノチューブ製ダイオードは従来の素子と違い,ダイオードのほか2種類の異なるトランジスタとしても機能する。
ダイオードは,p型とn型の半導体材料を組み合わせて作る。これまでの製法だと,半導体にある種の添加物を加える(ドーピングする)ことで両方の型の材料を生成していた。だだしこの製法では,添加物としてカーボン・ナノチューブを利用した半導体材料の量産ができなかった。
GE社の研究グループは,電界を使って素子内にp領域とn領域を設ける手法を考案した。まず,ナノチューブの下に設けられたゲート電極で電界結合を起こし,同一面上にある2つのゲートで2等分されたカーボン・ナノチューブを結合させる。
この状態で一方の電極に正電圧を,もう一方に負電圧をかけると,p-n接合が生ずる。固定的なドーピングを行ってはいないので,電圧の向きを逆にすればp-n接合とn-p接合を動的に入れ替えられる。さらに,両電極に負電圧をかけるとpチャネル・トランジスタになり,正電圧をかけるとnチャネル・トランジスタとして機能する。ダイオードとしては,発光ダイオード(LED)に加え,光を検知する機能も持たせられる。
GE社は,「このダイオードの性能は理論的限界に極めて近く,これまでにない高感度の光センサーを作ることができる」としている。
同ダイオードの詳細は,科学雑誌「Applied Physics Letters」の2004年7月5日号に掲載する。
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