米TIと米QUALCOMMのあいだで争われている特許クロス・ライセンス契約違反の訴訟について,両社がそれぞれ米国時間7月1日に声明を発表した。それによると,デラウエア州衡平法裁判所は6月30日に,略式裁判の実施を求めた両社の動議を認めたという。

 問題のクロス・ライセンス契約は,両社がお互いの無線製品向け半導体に関する特許を供与し合うという内容。2000年に締結し,2005年末までに双方が特許申請する技術を対象とする。米メディアの報道(CNET News.com)によると,TI社はQUALCOMM社のCDMA関連特許を,QUALCOMM社はTI社のトランジスタ関連特許をそれぞれ利用できるという。

 ところがQUALCOMM社は「TI社が契約に違反して機密情報を公開した」と主張し,2003年7月25日付けでデラウエア州高等裁判所に提訴した。QUALCOMM社は損害賠償と同契約に関するTI社の権利失効を裁判所に求めているが,「どの機密情報を問題にしているかについては明らかにしていない」(CNET News.comの報道

 この訴訟に対し,TI社は2003年9月23日,「QUALCOMM社が契約に従わず,QUALCOMM社製半導体製品を使用している携帯電話機メーカーに対してロイヤルティ割引を適用した」としてQUALCOMM社をデラウエア州衡平法裁判所に提訴した。CNET News.comの報道によると,QUALCOMM社はTI社の訴えを受け,すべての係争を1カ所の裁判所で審議するのが適当との理由から,デラウエア州高等裁判所に対する提訴をいったん取り下げてデラウエア州衡平法裁判所に提訴し直したという。

 両社の声明の概要はそれぞれ以下の通り。

【TI社】
・TI社は「当社の行った情報開示は契約違反に相当しない」「QUALCOMM社はTI社のCDMA特許使用権を停止できない」と主張しており,裁判所はこれらを認める方向

【QUALCOMM社】
・裁判所は「TI社の契約違反によって生じたQUALCOMM社の損害についてTI社は責任を問われる可能性があるが,QUALCOMM社にはクロス・ライセンスを停止する権利がない」と判断した

・裁判所はTI社の提訴に対して発動させたQUALCOMM社の略式裁判動議を許可し,「TI社の主張と異なり,QUALCOMM社に契約違反はない」と結論付けた

・裁判所は,「TI社の契約違反を不問にする」ことと「TI社がQUALCOMM社に損害を与えていない」ことに対するTI社の略式裁判動議を却下した

 QUALCOMM社が起こした最初の訴訟について,審理は2004年8月16日に始まる予定。

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[発表資料(TI社)]
[発表資料(QUALCOMM社)]