米法務省の訴訟長官室は,米連邦通信委員会(FCC)の「UNE(アンバンドル網要素)規制」の大部分を無効とするワシントンD.C.の連邦控訴裁判所による判決に対し,最高裁への上告を断念した。訴訟長官室が米国時間6月9日に明らかにした。FCCによれば,同規則は地域電話サービスの競争を促進するものであり,6月15日から施行される予定だった。上告しないという決定に対し,各方面から賛否両方の意見があがっている。

 同規制は,FCCが前年8月に通信業界の規制「Triennial Review Order」の一部。ベル電話会社に市内サービスの一部を競争相手に提供することを義務づける権限を州に委譲するという内容が盛り込まれていた。

 米Verizon社は,「難しい決定を下したブッシュ政権に賞賛を送りたい。現在の通信市場は消費者がけん引するものである。Verizon社には,卸し売り顧客と商用契約に関する交渉を行ない,顧客と企業へのサービス提供で競う準備ができている」とコメントしている。

 Sprint社は,「UNE規制の棄却に対して最高裁に見直しを求めないという法務省の決定を残念に思う。いくつかの電話サービスの価格が上昇するため,消費者にとっては悪いニュースだ。また,通信事業者にとっても悪いニュースであり,不確実な投資を続けなければならない」としている。また,「上告裁判所は,FCCにUNE規則の書き直しを求めているが,今回の決定により,新しい規則が,議会と最高裁が1996年に制定された電気通信法改正法からかけ離れたものにならないか心配である」と述べている。

 業界グループCompTIA(Computer Technology Industry Association)のTom Santaniello氏は「確信を持って言えるのは,このリーダーシップの欠如により,消費者とIT業界は大きなマイナスの影響を受けるだろう。地域電話の料金は上がり,サービス品質は落ち,IT革新は消え去るだろう」と述べている。

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