台湾のVIA Technologiesが,x86アーキテクチャ対応の低消費電力プロセサ・コア「C5J」(開発コード名は「Esther」)を米国時間5月18日に発表した。家電製品,組み込み機器,モバイル機器向けのコアで,消費電力の低さとセキュリティ機能が特徴という。

 C5Jは,VIA社の100%子会社である米Centaur Technologyが設計し,米IBMがニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mmウエーハ工場で製造している。90nmプロセス・ルールのほか,銅配線,シリコン/絶縁膜構造(SOI),低誘電率(low-k)絶縁体といった技術を採用。動作周波数1GHz時の消費電力は最大でも3.5wと低く,VIA社は「(最大動作周波数の)2GHz動作時でも当社の現行プロセサと同じ熱設計範囲で使用でき,処理性能は20%~35%向上する」としている。

 電子商取引における通信のセキュリティを確保するため,RSA暗号化とハッシュ値の計算(SHA-1およびSHA-256)をハードウエアで処理可能とした。暗号化と電子署名を実行する際にプロセサの負荷を小さくできるので,電子商取引を行うシステムの全体的な性能が向上するという。

 さらにC5Jは,米Microsoftの「Windows XP Service Pack 2(SP2)」に組み込まれるウイルス/ワーム対策技術「Execution Protection」に対応する。これにより,データ格納用メモリー領域に書き込まれたプログラムを強引に実行することを阻止し,ウイルスやワームの活動を抑えられる。

 システム・バス(FSB)のクロック周波数は最大800MHz。マルチメディア命令SSE2/SSE3に対応し,「大容量の」(VIA社)レベル2キャッシュを備える。

 「我々の行ったプロセサ設計により,小型のファンレス機器で負荷の高いセキュリティ関連処理がこなせるようになった。しかも,どんどん高度化するデジタル・エンターテインメント・アプリケーションも動かせる。これまでx86アーキテクチャの採用が困難だった(モバイル端末のような)カテゴリの機器でも,C5Jなら対応可能だ」(Centaur社社長のGlenn Henry氏)

 米メディアの報道(InfoWorld)によると,C5Jコアを採用した第一弾のプロセサは,2004年後半に利用可能となる見込みという。

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