米ABI Researchは,コンピュータ業界における超小型燃料電池(MFC:Micro Fuel Cell)採用の展望についての調査結果を米国時間5月12日,発表した。それによると,2012年までに世界のノート・パソコンの13.5%がMFCを電力源として利用するようになるという。

 米メディア(CNET News.com)によると,MFCでは,酸素と水素あるいはメタノールといった燃料の化学反応によって電気を発生させる。当初は自動車業界において,低排出のエネルギ源として実用化が進められていたが,近年はノート・パソコンや携帯電話で使用するリチウムイオン電池に代わる選択肢として,コンピュータ業界で注目を集めている。従来の電池より寿命が2~3倍長く,将来的には10倍まで伸ばすことも可能。なお,MFCの実用化に関しては,米国企業が先鞭をつけていたが,最近は日本企業がリードしているという。

 2005年には,ノート・パソコンやPDA(携帯情報端末)でMFCを限定的に採用するほか,特定のニッチ・アプリケーションでも利用するようになる。ABI Research社は,主に北米と日本で来年,2000個のMFCが試作されるとみる。その後,必要なコードや標準が確立すれば,2012年までにMFCの世界出荷数は1億2000万個に達する見通しだ。

 2005年にMFCを市場に投入するには,2004年末までにMFCの試作品と効率的な燃料補給システムを完成させる必要がある。ABI Research社は,燃料補給システムや燃料カートリッジの交換が高額だと,MFCの普及を妨げる可能性があると指摘する。

 別の米メディア(TechWeb)によると,韓国のSamsung,東芝,ソニーなどがMFCの実用化に力を入れているという。

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