米Xeroxは,低温かつ空気中という環境で印刷技術ベースのトランジスタ製造を可能とする各種素材を開発した。Xerox社が米国時間4月16日に明らかにしたもの。同社の研究チームが開発した半導体的性質を持つインクなどにより,「丸められる柔らかなテレビ画面やコンピュータ・ディスプレイの実現に一歩近づいた」(同社)という。

 同社によると,「世界中の企業が,柔軟なプラスチック上にトランジスタを新聞と同じくらい簡単に“印刷”できる半導体技術を開発すべく競っている」という。「こうした技術を利用すれば,柔らかな平面ディスプレイなどの大きな面積を持つ半導体デバイスや,無線ICタグ(RFID)などの微細な素子を安く製造できるようになる」(同社)

 同社フェローのBeng Ong氏が率いるXerox Research Centre of Canada(XRCC)の研究グループは,トランジスタ回路に含まれる半導体,導体,誘電体部品を印刷技術で製造するのに必要な素材を開発した。「ほかの研究グループが開発したほとんどの半導体素材は,トランジスタ製造時に高い温度が必要で,(空気中ではなく)不活性雰囲気中で処理しなければならない。それに対し当社の新素材は,低温かつ空気中でトランジスタを作れるので,製造コストを下げられる」(同社)

 Ong氏は,「トランジスタに必要不可欠なこれら3種類の液体素材を開発したことで,スピン・コーティングのほか,スクリーン,ステンシル,オフセット,インクジェット印刷といった一般的な液体薄膜技術を用い,低コストかつ柔軟なプラスチック製トランジスタの製造が可能になる」と説明する。同氏は,同素材または類似の材料を使った製品が,近い将来商業ベースで利用可能になると見込む。

 なお同氏は,同日カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたMaterials Research Societyの春季大会において,同素材について講演した。

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