米MicrosoftとInterTrust Technologies社の間で争われていたデジタル著作権管理(DRM)技術の特許侵害訴訟が和解に達した。両社が米国時間4月12日に明らかにしたもの。Microsoft社は4億4000万ドルの一時金をInterTrust社に支払い,特許技術のライセンスを取得する。

 またInterTrust社は,Microsoft社の特許のもとで,DRMとセキュリティに関する参照技術仕様を設計および発行する権利を得る。

 InterTrust社は,シリコン・バレーに拠点を置く未公開企業。1990年に設立され,2003年にソニーの米国法人Sony Corporation of America,オランダのRoyal Philips Electronics,Stephens Bank社が所有するジョイント・ベンチャーFidelio Acquisition社に買収された。現在,30件の米国特許を保有する。

 InterTrust社が最初にMicrosoft社を訴えたのは2001年4月。Microsoft社の「Windows Media Player」などがInterTrust社の保有する特許を侵害しているとして,カリフォルニア州北地区連邦地裁に提訴した。以降,2001年10月2002年2月2002年3月2002年6月と訴訟を拡大し,Microsoft社に対して,DRM技術を含むすべてのMicrosoft社製品の販売差し止めと損害賠償の支払いを求めていた。一連の特許侵害訴訟の対象となる特許は合計11件,訴えの件数は144件にのぼった。

 今回の和解により,エンド・ユーザーはMicrosoft社製品およびサービスの使用にあたり,InterTrust社のライセンスを購入する必要はない。また,Microsoft社のプラットフォームを利用するソフトウエアの開発者も,通常および予想される範囲の用途においては,InterTrust社のライセンスを取得しなくてよい。ただし,Microsoft社の技術と他社の技術を組み合わせた場合などは,システム・インテグレータを含む開発者はライセンスの取得を求められる可能性がある。

 「今回の発表は,当社の知的資産がDRMとTrusted Computing(信頼できるコンピューティング)の発展にもたらす影響を認めるものだ。当社は,開発,ライセンシング・プログラム,参照技術などを通じて,引き続きこれらの重要技術の普及を図る」(InterTrust社CEOのTalal Shamoon氏)

 「DRMは,個人のコンテンツ,企業のコンテンツ,商用コンテンツの安全性を確保するために必要不可欠な技術だ。当社が保有する技術および知的資産と,InterTrust社との新たな提携により,当社は業界と広範な協力体制を敷き,DRM規格と製品の普及促進に取り組む」(Microsoft社Windowsクライアント事業部門上級バイス・プレジデントのWill Poole氏)

 ちなみに米メディアの報道(NYTimes.com)によると,両社の和解交渉は昨年夏に始まっていたという。

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