米Sun Microsystemsと米Microsoftは,両社間のJavaをめぐる係争で全面的に和解した。両社が米国時間4月2日に明らかにしたもの。係争中のすべての訴訟で和解するほか,今後の技術協力や特許の相互利用などについても合意に至った。

 これにより,Microsoft社は独占禁止法関連の和解金7億ドルと,特許関連の和解金9億ドルをSun社に支払う。さらにMicrosoft社は,特許使用料3億5000万ドルを前払いする。将来Sun社がサーバー製品にMicrosoft社の技術を使用する場合は,その都度,特許料を払う。両社が結んだ提携の期間は10年間という。

 この合意について,両社のトップはそれぞれ以下のようにコメントした。

 「両社は今後も強力な競争相手であり続けるが,この合意はお互いの顧客にメリットをもたらす新たな協力関係を築くことになる」(Microsoft社CEOのSteve Ballmer氏)

 「合意が刺激となり,新たな製品が生まれる。こうした製品を利用すると,複数ベンダーのサーバーを組み合わせる選択肢が増え,多種多様なコンピュータ環境で“シームレス・コンピューティング”の実現が可能になる」(Sun社会長兼CEOのScott McNealy氏)

 そのほかの合意事項の概要は以下の通り。

・技術協力:
 お互いにサーバー技術情報を提供し,より連携させやすいサーバー・ソフトウエア製品の開発を目指す。その結果,Microsoft社のActive DirectoryとSun社のJava System Identity Server間でユーザー認証情報の共有が容易になり,コンピュータ環境の簡素化と安全性向上につながる。

・Microsoft社の通信プロトコルの利用:
 Sun社は,Microsoft社のライセンス・プログラム「Communications Protocol Program」に基づき,Windowsサーバー/クライアントOSで使用している通信プロトコルの技術情報を入手する。

・Microsoft社によるJava対応:
 Microsoft社は,同社製品用に配布しているJava仮想マシン(Java VM)の提供を継続できる。

・Sun社製サーバー向けWindows認定:
 両社は,Sun社のXeonプロセサ・ベースのサーバー向けWindows認定プログラムを運営する。さらに,同様のプログラムをSun社製Opteronサーバーでも提供するための準備を進めている。

・Javaと.NETに関する協力:
 Javaと.NETの連携技術の改善に向け協力する。

・特許と知的財産の相互利用:
 過去の特許侵害訴訟についてすべて和解し,将来も提訴しないことで合意。さらに両社は,特許のクロス・ライセンス契約に向けた交渉を開始する。

 なお,両社間のJavaをめぐる係争は次のような経過をたどっていた。Sun社は1997年10月7日に,Microsoft社が自社製品にのみ互換性のあるJava製品を出荷したとして提訴。両社は2001年1月23日に和解し,Microsoft社はSun社のJava技術を使った既存製品(ベータ版を含む)の出荷を継続して行えるようになった。ただしそれは,Java 1.1.4が組み込まれているMicrosoft社製品に対してSun社が限定的に許可するもので,その有効期間は7年間となっていた。Microsoft社はWindows XPにJava VMを標準搭載しないことを決定し,2001年7月にその旨を発表した。

 Sun社は2002年3月,Microsoft社が「Javaプラットフォームの普及を妨害し,ライセンスを受けていないJava対応製品を配布した」として,Microsoft社を独禁法違反で提訴した。その際,Sun社はMicrosoft社に,1)「Windows XP」と「Internet Explorer」にSun社が開発した現行のJavaプラグインのバイナリ実装を組み込んで配布すること,2)Microsoft社のJava VMの別途ダウンロード配布を中止すること,などを求めていた。

 この訴訟について,連邦地裁は2002年12月にSun社の言い分を認める判決を下している。同判事はMicrosoft社に対し,Sun社のJava技術をWindowsに即座に搭載するよう仮命令を言い渡した。Microsoft社は「(この裁定が)市場の自由な活動に対して不必要な干渉をしている」として,2003年2月に控訴した。

 これに対し,米第4巡回区連邦控訴裁判所は2003年6月26日,Microsoft社が著作権を侵害しているとの地裁の判断を支持する判決を下した一方で,Java搭載の仮命令については差し戻しとしていた(関連記事)。

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[発表資料(Sun社)]
[発表資料(Microsoft社)]