米Forrester Researchは,無線ICタグ(RFID)の導入費用に関する調査結果を米国時間3月30日に発表した。それによると,米Wal-Martが要求しているRFID導入を考えた場合,サプライヤが初年度に負担する費用は,初期投資を含め約900万ドルにのぼることが明らかとなった。「Wal-Mart社が定めた2005年1月の導入期限に対応できるサプライヤはわずか25%に過ぎないだろう」(Forrester Research社)

 導入費用は,RFIDのインフラ,コンサルティング,倉庫スタッフなどを考慮したものだが,その額はサプライヤの物流ネットワークやWal-Mart社への納品量によって異なる。

 費用の大半はサプライヤが継続的に負担する必要があるため,RFIDの普及が遅れる要因となる。また,「RFIDの技術も確立しておらず,サプライヤのRFID導入を支援するための専門知識も業界には欠けている」(Forrester Research社上級アナリストのChristine Spivey Overby氏)。

 その他の主な調査結果は以下の通り。

・サプライヤの費用負担のうち,タグが80%以上を占める。現時点のタグの生産工程や生産量を考慮すると,タグ1個あたり40セント未満にならなければ,サプライヤの採算が合わない
・RFID専門家が不足しているため,物流センター稼働にあたっての専門的なサービスを受ける費用は増加する一方となる
・RFID導入の初年度は,タグ付け,梱包物へのRFID組み込みなどを自動化するソリューションが整備されていないため,かえって労働力を増やす必要がある

 RFIDを利用した生産履歴などを実現するには,物流センターよりはむしろ製造メーカーでのRFIDを導入する必要がある。ただし,製造メーカーでのタグ付けは,生産工程の再設計など莫大な手間がかかるため,場合によっては1億ドルの予算が必要になるという。「今後12カ月でこのようなアプローチをとれるのは,米GilletteのようにRFIDを早期に取り入れた企業だけだ」(同社)

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