米RSA Securityは,無線ICタグ(RFID)の情報保護技術「RSA Blocker Tag」を米国時間2月24日に明らかにした。サンフランシスコで開催中の「RSA Conference 2004」で,プロトタイプのデモを行う予定。

 RSA Blocker Tagは,タグから情報を盗み出して商品や購入者を追跡するといった行為を防止する。また,「正常なRFIDの機能に障害を及ぼすことはない」(RSA社)という。同技術はRSA社の研究部門RSA LaboratoriesとRonald Rivest氏が共同で開発し,現在特許申請中である。

 RFIDは,短距離でユニークなシリアル番号を無線送信する小型チップ。コスト削減やサプライ・チェーン効率化を実現する次世代バーコードとして期待を集めている。しかし同時に,格納された情報を第三者が読み取ってしまう可能性があるため,プライバシの侵害につながるとの懸念もある。

 「技術的な配慮なくRFIDを利用可能にすれば,読み取り機を使って機密情報が盗み出される危険性がある。ユニークなシリアル番号が購入者や商品の追跡に使われる恐れがあるほか,企業も産業スパイの脅威にさらされる」(RSA Laboratoriesディレクタ兼チーフ・サイエンティストのBurt Kaliski氏)

 薬局を模したプロトタイプ・システム「RXA Pharmacy」では,参加者がデモ用の処方箋に必要事項を記入し,製薬タイプを3種類(Wisdom,Tranquility,Happiness )の中から選択する。薬(デモではジェリー・ビーンを使用)はRFIDが付いたビンに詰めて渡される。RFIDには,参加者の詳細な情報のほか,ビンが購入済みであることも記録されているので,薬局店内で情報盗難システムが反応することはない。チェックアウトの際,薬剤師(RSA Laboratoriesの研究員)が特別な紙製の「遮断袋」を配る。この袋は,ビンのRFIDに格納された情報が不当なスキャニングによって漏洩するのを防ぐ。袋から取り出してRFIDを読み取れば,記録された処方箋をもとに同じ薬を詰めてもらうことができる。

 なお,RSA Blocker Tagは現在,研究段階にあり,「数年以内に小売店で実用化する見込みはない」(RSA Laboratories)という。

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