米IBMは,シリコン/絶縁膜構造(SOI),ストレインド・シリコン,銅配線といった技術を組み合わせて低消費電力/高性能のマイクロプロセサを作る製造方法を開発した。IBM社が米国時間2月13日に明らかにしたもの。「これら技術を1つのプロセサ内で使うのは,これが初めて」(同社)という。この製造方法で量産する初の製品は,64ビット・プロセサ「PowerPC 970FX」。ニューヨーク州イーストフィッシュキルにある300mmウエーハ/90nmプロセス対応工場で製造する。

 同社は,ストレインド・シリコンとSOIを1つの製造プロセスに適用し,大幅な省電力と性能向上を両立させたとしている。「トランジスタを流れる電子の速度を高めることで性能を上げ,シリコン内にトランジスタを絶縁する層を設けたことで消費電力を減らした」(同社)

 「当社が開発してきた技術の融合により,省電力化のために性能を犠牲にする必要はなくなる」(IBM社フェロー兼システム&技術グループ主任技術者のBernard S. Meyerson氏)

 この製造方法で作るPowerPC 970FXは,「POWER4」コアを2つ搭載する多目的マイクロプロセサ。対称型マルチプロセッシング(SMP)技術を採用し,最大18Eバイト(エクサ・バイト=10の18乗バイト)のメモリーを扱える。64ビット・アプリケーションに加え,32ビット・アプリケーションの実行も可能。また,動作周波数と電圧を制御することで消費電力を削減する「Power Tuning」技術を導入している。Power Tuningの詳細は,2月16日にサンフランシスコで開催するInternational Solid-State Circuit Conference(ISSCC)で発表する。

 なおPowerPC 970FXは,米Apple Computerが1Uラック・マウント・サーバー「Xserve G5」での採用を表明している。

◎関連記事
米IBMの65nmチップおよび「Cell」製造に,ソニー・グループが3億2500万ドルの投資
米IBM,SOIウエーハ上でSiGe製バイポーラ・トランジスタの形成に成功,「性能は4倍,消費電力は1/5」
米IBM,半導体の性能を数10%向上させる製造技術を開発,詳細は12月のIEDMで発表
米TI,新素材のHigh-kゲート絶縁膜を用いた実用的な半導体製造方法を開発
米Intel,高誘電率ゲート絶縁膜/金属製ゲート採用のトランジスタ開発に成功
米PARC,インクジェット印刷技術を応用しトランジスタを製造
米AMDが「現行品より30%高速」なPMOSトランジスタの開発に成功,「詳細は6月のVLSI Symposiumで」
米AppleがPowerPC G5搭載サーバー「Xserve G5」を発表,「処理能力は30ギガフロップ以上」

[発表資料へ]