米Intelの研究者が,シリコン・フォトニクス(シリコン半導体を使った光回路)の開発に成功した。Intel社が米国時間2月12日に明らかにしたもの。研究チームはシリコン半導体の製造プロセスを応用し,データを光ビームに変換する「世界最高速」(同社)の素子を作った。

 同社では,「この素子を利用すると一般的なシリコンで高速な光変調器を作ることができ,低コスト/広帯域の光接続をパソコンや各種電子機器,さらにはパソコン内部でも使えるようになる」としている。

 研究チームは実験で,光ビームを2つに分け,シリコン・フォトニクスでその一方ビームと電荷を衝突させて位相シフトを起こした。その後2つのビームを再び1つに合わせると,両者間の位相シフトの効果により1GHz以上の速度で光のオンとオフを切り替えられたという。「オンとオフの状態は,データ転送に使う(デジタルの)1と0に置き換え可能だ。(1GHzという値は)これまで半導体で実現可能な速度より50倍も速い」(同社)

 同社によると,「現在の技術で商用光素子を作ると,高価で特殊な材料が必要な上に製造方法も複雑なので,用途はWANや電気通信業界などの分野に限られる」という。「当社が開発した方法なら,一般的なシリコンを使って1GHz超の高速な半導体光変調器を作れる。そのため,広帯域光通信のメリットをさまざまな処理/通信分野で享受できる」(同社)

 研究チームでは,このシリコン・フォトニクスの速度を最大10GHzまで高速化できるとみる。異なる波長の光ビームを使えば,通信の多重化も可能という。さらに光通信には,銅線による高速接続では避けることの難しい電磁干渉やクロストークの問題もない。

 同社が開発した素子の詳細は,英国の科学雑誌Nature(同日版,Volume 428)に掲載する。論文のタイトルは,「A high-speed silicon optical modulator based on a metal-oxide-semiconductor capacitor」。

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