米Microsoftは,米Eolas Technologiesとの特許侵害訴訟問題に関して,WindowsやInternet Explorer(IE)にすぐに変更を加える予定がないことを,米国時間1月29日に明らかにした。

 「現在の法律事情に加え,パートナ企業や顧客からの要望をくみとって,当面はWindowsやIEに変更を追加する計画を保留することに決定した」(Microsoft社)

 この特許侵害訴訟は,Eolas社がMicrosoft社を1999年に訴えたことに始まる。Eolas社が問題とする特許は,プラグインやアプレット,ActiveXコントロールのようにブラウザに機能を追加する技術に関するもの。シカゴの連邦地方裁判所は,「IEやWindows 95以降の各種WindowsがEolas社の特許を侵害した」として,2003年8月11日,Microsoft社に約5億2100万ドルの支払い命令を下した。

 この判決を受け,Microsoft社は問題の特許技術を回避する策としてWindowsやIEを修正する考えを,2003年10月6日に明らかにした。その際,IEの仕様を「わずかに」変更すること,変更を加えた新しいWindowsを2004年にリリースする計画などについて触れた。

 しかしIEに変更を加えても,Web開発者がこれに対応した処置を行わない場合,米Macromediaの「Flash」,米Apple Computerの「QuickTime」,米RealNetworksの「RealOne」,米Adobe Systemsの「Acrobat Reader」,米Sun Microsystemsの「Java Virtual Machine」,Microsoft社の「Windows Media Player」などの技術を用いたコンテンツを表示する際に,毎回ダイアログ・ボックスが現れるという問題が発生する。

 Macromedia社などが対応策を進める中,Web関連技術の標準化団体World Wide Web Consortium(W3C)は2003年10月に,Eolas社が所有する米国特許が無効であると主張し,米国特許商標局(USPTO)に再審査を求めた。W3CディレクタでWeb技術の発明者でもあるTim Berners-Lee氏は,「すでに普及した技術の利用を困難にするEolas社の特許を認めると,Webを運用することで莫大な経済的/技術的な損害が発生してしまう」との懸念を示している。

 なお,Microsoft社とEolas社の訴訟は今月初めに最終審理に入っており,Microsoft社は控訴する意向だという。

◎関連記事
巨人MSを揺るがす特許侵害訴訟──全世界のネット利用者を巻き添えに
W3C,特許商標局に米Eolasのブラウザ特許の再審査を要求
米Microsoft,ブラウザの特許侵害で巨額の支払いの評決
ブラウザ特許問題で米MicrosoftがIEを修正,米Macromediaも情報やリソースを提供
W3Cが特許ポリシーをついに承認。「基本はロイヤルティ・フリーだが例外の道を残す」
「Webの標準技術に特許料を認めるか?」── W3Cを舞台に激論続く
【TechWeb特約】W3Cの特許ポリシーで議論白熱,標準仕様に特許は馴染むか?

[発表資料へ]