米Deloitteは,2004年における米国の有線および無線/モバイル市場の展望について調査した結果を米国時間1月27日,発表した。それによると,より柔軟な価格体系と広帯域接続の需要の高まりが,家庭や企業における有線/無線技術の普及を後押しするという。

 「広帯域向けデバイスが次々と市場に投入されることで,広帯域接続の普及が加速化する。消費者は無線/有線ネットワークを利用した新しいアプリケーションを求めており,通信事業者も投資に意欲的である」(Deloitte社Telecommunications Practice担当マネージング・パートナのPhil Asmundson氏)

 有線分野では,より高速な接続サービスが低価格で利用できるようになる。このため,より速いWebアクセスを求める小規模企業が広帯域接続サービスに乗り換える。また,ゲーム機,ビデオ電話,家庭向けセキュリティ・システム,セットトップ・ボックス,デジタルHi-Fi,家庭向けメディア・システムなど,パソコン向け以外の用途も新たな需要をつかむ。さらに,企業ネットワークにおけるVoIPの導入が進み,日本同様,VoIP利用者が100万人を超える見通しだ。

 有線分野における,そのほかのおもな予測は次の通り。

・広帯域向けデバイスの需要が2004年第4四半期に盛り上がる。

・2004年におけるVoIPの利用は限られた範囲にとどまる。しかし,通信事業者の長期的な戦略において,エンド・ツー・エンドのVoIPサービスが重要な位置を占めるようになる。

・接続サービス料金の横並び化が進み,事業者間における料金の変動要素はデータ通信サービスになる。

・音声通信サービスでは,依然として有線が主流となる。

・さまざまな新規参入企業が大手企業の市場シェアを侵食する。

・通信事業者は海外へのアウトソーシングをうまく利用することで,社内コストを削減し,市場機会をつかむことができる。

・通信事業者は売上高を伸ばすために,積極的に新しい技術を導入する。

 無線/モバイル分野では,データ通信サービスが発展途上段階にあることから,携帯電話事業者の主な収入源は音声通信サービスとなる。Deloitte社は,「音声通信サービスを売り込むには,IPボイス・メールなど,音声とデータを組み合わせた各種サービスが必要だ」と指摘する。

 携帯電話は,55歳以上などの新たなユーザー層の需要が見込まれることから,継続的に普及が進行する。また,カメラとカラー・ディスプレイも,携帯電話事業者に大きな売上高をもたらす要素だ。

 無線/モバイル分野における,そのほかのおもな見通しは次の通り。

・テキスト・メッセージングの利用拡大が停滞し,データ通信サービスの成長は減速する。

・第3世代(3G)携帯電話が増えるものの,大衆市場をつかむまでには至らない。

・企業向けモバイル・サービスが徐々に拡大するが,ニッチ市場となる。

・携帯電話の場合,ユーザーが欲しい情報にアクセスするプル型サービスより,情報の更新に応じてサーバーから配信するプッシュ型サービスの方が効果的である。

・Wi-Fi公衆無線LANアクセスポイントの実質的な利用はあまり進まない。

・無線LANの影響を最も受けるのは,社外で業務を行う企業ユーザーと家庭ユーザーである。

・携帯電話のカスタマイズを可能にするカラー・ディスプレイと多声着信音が,売上高をけん引する。

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