米CSC(Computer Sciences)と上級財務役員のための団体FEI(Financial Executives International)は,ITプロジェクトのROI(投資回収率)について調査した結果を米国時間1月28日に発表した。それによると,IT戦略とビジネス戦略の連携によってROIを向上できるにも関わらず,戦略的なITプランを持たない企業が60%に達したという。

 調査は,主として北米およびカナダの企業で上級財務管理職を務める607人を対象に実施した。

 「ITプロジェクトによって高いROIを実現している」という企業は,全体のわずか10%だった。一方,ビジネス戦略とIT戦略を連携している企業の場合,その割合は24%に増加する。しかし,実際にビジネス戦略とIT戦略を「完全に連携させている」という企業は7%で,「ある程度連携させている」企業は約30%。大多数の企業は,両者を視野に入れた戦略を立てていないことが分かった。

 CSCのCOOであるEd Mello氏は,「企業がITプロジェクトに取り組む場合,過去の習慣や業界の風潮に従うのではなく,ビジネス戦略を考慮することがますます重要になっている。新しいビジネス・モデルの構築やセキュリティ問題など,さまざまな分野で適切な意思決定が可能になるからだ」と説明する。

 財務担当管理職の多くがセキュリティ問題を懸念している。自社の情報および電子アプリケーションに関して,適正なセキュリティ・レベルを確保することが「極めて重要」という回答者は半分以上に達した。

 回答者のほぼ全員が,コンピュータ化されたシステムへの依存度の増加と,それに伴うリスクに関して「極めて強い」もしくは「強い」懸念を抱いている。また,業界のセキュリティ標準と,米国企業改革法(Sarbanes-Oxley Act)や医療関連データ規格「Healthcare Insurance Portability and Accountability Act(HIPAA)」といった法規制に準拠するためのコストに同様の懸念を持つ回答者は約3分の2にのぼった。増加するセキュリティ関連費用について「極めて強い」もしくは「強い」懸念を抱いてる回答者は半数で,自社に対するテロリストの攻撃について同様の懸念を持つ回答者は3分の1だった。

 また,ERPプロジェクトの完了が予定より長引いたという回答者は40%以上,予算を超えたとする回答者は55%だった。ERPの導入は簡単ではないものの,ERPプロジェクトを完了した回答者の4分の3がその成果に満足していた。

 「企業が高いROIを実現するには,CFOが社内のIT部門にも目を向けることが必要だ」(Mello氏)

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