松下電器産業はラスベガスで開催中の「2004 International CES」で,家庭の電源線を利用した高速IPネットワーキング技術「Power Line Communications(PLC)」を,米国時間1月8日に発表した。同技術は,電源線利用の家庭内ネットワークの標準化を進める業界団体「HomePlug Powerline Alliance(HPA)」の次世代仕様「HomePlug AV」にも採用される予定である。

 PLCは,カセット・テープ大のアダプタを使用して,広帯域の家庭内ネットワークを構築する。このアダプタは,広帯域データ信号を電源線用に変換するLSIチップセットと,LANコネクタ,電源差込口からなり,ADSLや光ファイバといった広帯域接続を,家庭の既設の電源線まで引き込むことができる。

 松下は,HPAが2004年の夏までに仕様の策定を完了すれば,消費者と企業向けのPLCアダプタを,2004年末までに提供できるとみる。商用LSIチップセットも同じころにリリースする予定である。

 現在,家庭内ネットワーク技術には,無線LAN,同軸ケーブル,Ethernetなどがある。しかし,同軸ケーブルとEthernetはケーブルの敷設が必要であり,無線LANは離れた部屋同士の通信が困難で,セキュリティ確保の問題もある。

 松下では,こうした問題に対処するために,「HD-PLC(High Definition Ready High Speed Power Line Communication)」技術を開発したと説明する。変調方式の「OFDM」(Orthogonal Frequency Division Multiplexing,直交周波数分割多重)と,圧縮方式「Wavelet」を組み合わせ,干渉によるノイズ・レベルを従来より5分の1に削減したという。

 またこのほか松下は,無線伝送技術「TDMA(Time Division Multiple Access)」の新しい仕様を開発した。HD-PLCは,TDMAを利用することで,家庭の電源線に接続したPLCアダプタを介して,テレビ,コンピュータ,オーディオ機器といったデバイスのデータ転送を効率化できるという。

 「これら当社独自の技術は,家庭の電源線を利用して,光ファイバに匹敵する190Mbpsの超高速接続を手頃な価格で提供できる」(同社)という。

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