仏伊合弁のSTMicroelectronicsは,放射線による半導体の「ソフト・エラー」発生率が低いSRAM「rSRAM」を開発した。同社がスイスで現地時間12月15日に明らかにしたもの。試作したrSAMで加速試験を実施したところ,通常のSRAMに比べソフト・エラーの発生する頻度が250分の1に下がったという。しかも「セルの面積を大きくする必要もなく,現行の製造技術を応用しているので,コストや性能面の問題もほとんどない」(同社)。

 ソフト・エラーとは,半導体そのものや,LSIのパッケージから放射されるアルファ線などがメモリー・セルに当たって生じるエラーのこと。メモリー・セルは電荷を保持することで情報を表現するが,近くをアルファ線などが通過すると電荷に乱れが発生し,エラーとなる。宇宙から飛来するアルファ線など,宇宙線が原因になることもある。半導体の集積化が進み,LSIを構成するトランジスタが小さくなるほど放射線の影響を受けやすくなるので,ソフト・エラーの発生率も上がる。高い信頼性が要求される装置に使うLSIでは,ソフト・エラーが発生しても正常に動作できるよう,エラー訂正機構を組み込むことが多い。

 STMicroelectronics社が開発したrSRAMは,通常のSRAMセルにコンデンサを付加した。コンデンサは電荷を蓄える素子であるため,エラーを起こすのに必要な電荷の量が増え,アルファ線が通過しても影響を受けにくくなる。なお,コンデンサは基板の垂直方向に追加するので,メモリー・セルの面積を増やさずに済む。

 同社は試験用のrSRAMチップを,120nmプロセス・ルールで製造し,通常よりはるかに多くのアルファ線を照射して加速試験を行った。その結果,ソフト・エラーに対する耐性が,現在の一般的なSRAMに比べ250倍もあることがわかったという。

 ただし同社は,rSARMを採用する製品の具体的な計画については明らかにしていない。

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