米Intelは,過去の“経験”を“学習”して予測動作の精度を自動的に高めるコンピュータの開発を支援するため,ソフトウエア・ライブラリを公開した。Intel社が,カナダのバンクーバーで開催中のNeural Information Processing Systems Conference(NIPS2003)で現地時間12月8日に明らかにしたもの。

 同ライブラリは,過去に発生した事象のパターンを計算し,将来どのようなことが起るか予測するシステムを実現するための技術。同社では,「医薬品への応用などが期待されるタンパク質を見つけるため巨大な遺伝子データベースを探し回るアプリケーションや,人間の行動をモデル化することで受信した電子メールの最適な分類方法を自動的に決定する電子メール・システムなど,あらゆる目的に利用できる」と説明する。

 Intel社技術グループ担当副社長兼研究担当ディレクタのDavid Tennenhouse氏は,「当社は予測能力に優れたコンピュータの開発を目指している」と述べる。「それには,コンピュータがユーザーや周囲の環境から“経験”を学ばなければならない。同ライブラリには,重要なパターンを特定するために新しい統計的手法を採用した。そしてユーザーが必要とすることを予測し,最も多いであろう要求に対する結果をあらかじめ計算しておく。こうすることで,反応が必要になると瞬時に答えを出せる」(同氏)

 同ライブラリは,学習可能なコンピュータ開発を支援する機能をまとめたツールボックスの形態で提供する。ベイジアンと呼ばれる数学原理を応用した同社の「Open Source Machine Learning Library(OpenML)」技術で実現している。ベイジアンは,不確かな事象が連続発生する状態を,確率の相互作用を集計して解析する手法で,将来起こるであろう事象の発生確率を求められる。ベイジアン・モデルは経験から集めたデータを基に解析を行うので,データの量が多いほど予測精度が上がるという。また,データが変われば,算出する結果も自動的に修正できる。

 「高速なマイクロプロセサを使うことで,OpenMLは学習可能なコンピュータを使ったアプリケーションの展開を確実に促進できる。たとえば,子供の動きに対応した動作をするようなおもちゃや,我々の環境の安全性/生産性,快適さを向上させるネットワークの無線センサーなどが実現可能だ」(Tennenhouse氏)

 同ライブラリは,ロイヤルティ・フリーの再配布可能ライセンスを適用し,オープンソース・ソフトウエアとしてC++で記述したソース・コードを提供する。詳細については,Intel社のWWWサイトに掲載している。

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